Breadcrumb navigation

連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

第18回 やらされ感を無くせ!撲滅のために必要な行動とは?

2020年12月9日

貴方でなければならない意味を語れ

仕事の持つ意味が分かったとしても、なぜそれを自分がやらなければならないのか。他に適任者がいるのではないか。こんな考えを持たれてしまっては、「やらされ感」の世界に一直線だ。

私は仕事の持つ意味と同レベルで、なぜ貴方にそれを任せようと思っているのかのコミュニケーションにも力を注いでいる。

私たちのチームはそれぞれに強み・専門性があるメンバーで構成されており、そのレベルも個人によってバラツキがある。それ故、興味ある領域や目指す専門性について、日常的にコミュニケーションを取るようにしている。

当然毎回100%一致することはありえないが、出来るだけ本人の目指す方向性に合うプロジェクトをアサインし、人選した理由を必ず伝えるようにしている。誰でも良い訳ではない。組織と個人の方向性を照らし合わせた上で最適な人物は貴方において他ならない。私がそう考えたということを、シンプルにそのまま伝えるのだ。

こういったコミュニケーションは時間がかかるし、人によっては一手間二手間増えるように感じることもあるかも知れない。しかしこのプロセスをしっかり行うことで、やらされ感のある仕事はかなり減らせられるというのが実感値だ。

インセンティブではなく、ドライブ

守破離の「守」(※)においてはこれまで述べてきた方法で、ある程度機能する。しかし、やらされ感のある仕事を無くしたとしても、人から頼まれた仕事ばかりやっているようなチームでは、大きな価値は産み出せない。守破離でいうところの「破」「離」にステージを上げる必要があり、そこでは主体的な提案・働き方を認め、賞賛するカルチャーづくりが重要になってくる。

「それ、いいね。やってみようよ。」

どうやらこれが私の口癖のようだ。あるメンバーから指摘されて、初めて気付いた。
リーダーの口癖はそのチームのカルチャーを良くも悪くも決定付ける。せっかく提案してくれたことを絶えずダメ出ししているようなカルチャーの組織で、メンバーが主体性を発揮することなど不可能だろう。

さらにいうと目標達成やキャリアUPなどインセンティブ系の話だけでは、主体性に限界がくるというのが私の考えだ。確かに目の前にニンジンがぶら下がっていた方が頑張れるといったことは一定レベルまでは言えることだが、突き抜けられない。何故ならインセンティブの獲得自体が目的化してしまうからだ。そしてインセンティブの多くは金銭・役職などの資源に限りあるものが対象になっている場合が多く、無制限にという訳にいかない問題にも直面する。

たとえば、子供に勉強したらおやつをあげるといった教育をした場合、おやつの獲得が目的になってしまい、おやつが無ければ勉強しない子供になってしまう。勉強の楽しさに気付かせて上げれば、おやつなどあげなくても自ら勉強する子に育つ。

突き抜ける人の特徴は外側にあるインセンティブでなく、自身の中にある内発的動機にドライブされている点にあると思っている。

ミッション・ビジョンといった方向性を一致させることは大前提だ。しかしそれを実現させる方法はやらされ感でなく、個人の内発的動機に駆動される形で目指したい。

それが私の目指すチームづくりである。

(※)守破離は、日本の茶道や武道などの芸道・芸術における師弟関係のあり方の一つであり、修行における過程を示したもの。もとは千利休の訓をまとめた「利休道歌」にある、「規矩作法 守り尽くして破るとも離るるとても本を忘るな」を引用したものとされている。
 「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。
 「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものをとり入れ、心技を発展させる段階。
 「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。

執筆者プロフィール
若林 健一
NECマネジメントパートナー株式会社
業務改革推進本部所属
1980年 生まれ
2002年 NEC入社
2018年 NECマネジメントパートナーにて高度化サービス開発チームを設立
経営管理・人事・マーケティングを中心に、データアナリティクスとAIを活用した NECグループの経営高度化について、2年間で200プロジェクト実施
NEC Contributors of the Year2019など数々の賞を受賞
執筆者:若林 健一