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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

2020年8月21日

第10回 挑戦する組織・人づくりのために私たちがしてきたこと(後編・人編)



「失敗した。成果を早急に求めすぎてしまった・・・」

メンバーに混乱を与え苦しめてしまった、私の苦い経験だ。

苦い経験から生み出した挑戦する人づくりのコツ

挑戦する人を育てるにはどうしたら良いか。

恐らくどの組織も抱える共通的な悩みだろう。実際に私たちも、チーム設立当初から現在に至るまで大きなテーマである。

事業のステージや人の成長段階によって有効なアプローチ方法は異なり、これという必勝法がないことを実感している。アンテナ高く様々な情報を取り入れながら、自分達の目指す姿を実現するために有効なアプローチを日々磨き続けている、というのが実態だ。

その中でも「基礎固め」「機会」「環境」の3点は、挑戦する人を生み出すという観点において私が強く意識しているポイントだ。

基礎固めは、やはり挑戦には外せない

「基礎」と「挑戦」、相矛盾した関係にみえる両者だが、「基礎固め」無くして、挑戦は出来ないと実感している。チーム設立時、私は早期に成果を上げたかったこともあり、サービス開発の基礎的な動き方をメンバーが習得する前に、OUTPUTだけを求めてしまった。当時はオペレーティブな業務経験が長いメンバーが多かったこともあり、ニーズ調査や関係者の巻き込み、競合のベンチマークなど、基礎固めが不十分であった。そのような状態にも関わらずOUTPUTを早急に求めることで、メンバーに混乱を与え、苦しめてしまった。成果を上げようと思って焦ったが故に、成果が出ないという皮肉な結果に終わったのだ。実に苦い経験である。この経験から「守破離」(※)のステップを踏むことの大切さを学んだ。

「挑戦する人」というと「破」(改善)、「離」(創造)の部分が強調され過ぎる傾向にあると個人的に感じている。「破」・「離」のステップまで進んで初めて挑戦と呼べることに違いは無いのだが、いきなりここを示されて混乱するケースが多いのではないだろうか。

挑戦の行動様式には一定の型がある。「守」(基礎固め)のステップでこの「型」を身に付けることが、結果として挑戦する人を育成する近道である。これが私の持論であり、自らの苦い体験から学んだことでもある。

「型があるから型破り、型が無ければただの形無し」というのはある有名な歌舞伎役者の弁である。



(※)守破離は、日本の茶道や武道などの芸道・芸術における師弟関係のあり方の一つであり、修行における過程を示したもの。もとは千利休の訓をまとめた「利休道歌」にある、「規矩作法 守り尽くして破るとも離るるとても本を忘るな」を引用したものとされている。
 「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。
 「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものをとり入れ、心技を発展させる段階。
 「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。