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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

2020年8月11日

第9回 挑戦する組織・人づくりのために私たちがしてきたこと(前編・組織編)

イノベーションと愛情の関係性

「プールに行きたくなければ、学校なんか行かなくても良い」

私が小学生時代、プールが嫌で学校をサボった際、父が私や担任の先生に向かって言った言葉だ。私が小学生だった30年くらい前の時代では、一人っ子はクラスに1~2人の少数勢力であり、一人っ子というだけで「甘やかされている」と色眼鏡をかけて見られることが多かった。さらに輪をかけて親が過保護であったこともあり、自分としてそういう環境におかれていることにコンプレックスを感じていた。

しかし、実はこの経験こそ、私のビジネスマインドの礎となっている。

前回のコラムでも述べたが、キックオフミーティング感情分析も当初から上手く行ったわけではなく、否定的な意見が多かった。新規事業開発は性質上、周囲の人に理解してもらえないことが多く、失敗も数多く経験する。それゆえ、ある意味では人の評価を気にしない神経の図太さや、妄信的に自らを信じる力が必要だ。

これらを駆動させるために必要な要素を私は「心のガソリン」と呼んでいるのだが、何がガソリンとなり得るのだろうか。

私が大事にしている要素。それは「愛情」だ。「イノベーションと愛情に何の関係があるのか」と思われるかもしれないが、これは自分自身の経験に立脚している。子供の頃は、過保護な親に育てられたことが、恥ずかしくて仕方がなかった。しかし、今振り返ってみれば、何があっても絶対的に愛してくれる存在が近くにいてくれたことは、自分を信じる力を身に付ける上で非常に重要だったと感じている。今では感謝しかない。過保護万歳だ。

実際、著名な教育界の有識者の方も、あるインタビューで「上手く育った子は、たった一人で良いから、誰かが贔屓してくれた経験を持っている」と答えられていた。私の場合、両親がそれにあたるが、親でなくても祖父母や学校の先生、部活の先輩などの場合もあるだろう。つまり、人は愛情をかけられればかけられるほど、自分を信じる力が身に付き、失敗を恐れず挑戦できる、イノベーションを起せる土台が築かれていくのである。

そしてそれは会社という組織においても同じだと考えている。私は入社以来、上司や先輩に恵まれ、多大な愛情をかけて頂いた。私が、周囲から何を言われようと、自分を信じて突き進むことが出来るのは、良き上司、良き先輩方のおかげだ。

現在は与えられる立場から与える立場に変わってきたので、今度は自分の子供たちやチームメンバーに出来るだけ愛情を注いでいきたいと常日頃から思っている。実際にどこまで出来ているか自信がない部分もあり、絶えず模索している。
こうした体験から、挑戦する組織や人材、イノベーティブな組織や人材を創りたければ、まず愛情を注げというのが私の持論である。