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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~
若林 健一
第8回 嘲笑にくじけるな!Purposeの力を起爆に?
周囲から嘲笑されたサービス
「これではサービスにはならない。」
あるキックオフミーティング(半期に一度組織単位で開催する事業方針説明会)で「感情分析」を行った結果を初めて周囲に見せて回った時の反応だ。
新しいサービスの開発に期待に胸を膨らませ、トライアルの結果を周囲に見せて回ったのだが、結果は惨敗。ものの見事に周囲から嘲笑された。
悔しかった。
そして負けず嫌いの私の心に火が付いた。
ことの発端はあるNECの開発部隊が「NEC感情分析ソリューション」という技術を紹介してくれたことがきっかけだ。私たちのことが、「なにか、面白そうなことをやっているチームがいるようだ」と、周囲に認知されてきたことで、NECグループの様々な部門から声を掛けてもらえるようになっていた。
紹介された技術は、リストバンド型のウェラブル端末から取得した心拍データをもとに、人間の感情を分析するというものだった。
私はこの感情分析を「キックオフミーティング」の場に適用させることで、経営を高度化できるのではないかと考えた。このイベントの企画運営業務を長く担当していたこともあり、重要性を理解していたからだ。一方で、どうしても半期に一回の儀式的な行事になってしまう傾向があり、リーダーへのフィードバックも、適切におこなえないことに問題意識を持っていた。
そこでさっそく、自組織のキックオフミーティングで感情分析を試してみた。その分析結果を見た瞬間、私たちは驚愕した。
「人の感情がデータ化されている!」
今まで見たこともないデータを前にし、私は想いを未来に馳せた。経営3大リソースである「ヒト・モノ・カネ」の内、「ヒト」は最も可変性が高く、最も経営にインパクトを及ぼすリソースだ。
その「ヒト」の感情がなんと、デジタル化されて出てきたのだ。
「これからはシステム上に存在するデータだけでなく、目に見えない情報も定量的に可視化される時代になる…」
この事実に遭遇し、今後のマネジメントスタイルは大きく変わるだろうと、私は確信した。
しかし冒頭のセリフにあるように、最初からサービスとして十分価値を発揮できていた訳ではなかった。データは可視化されて出てきたものの、活用にまで至っていなかったのだ。
そこでNECの社長からCxO、役員、事業部長などのリーダー層に協力してもらい、私たちは1年間様々なキックオフの場で実証実験を繰り返した。(匿名で取得し、集団値として分析、セキュアな環境でデータ管理を行うなど、データマネジメントにも十分配慮して実施した)
述べ2,000名以上の実証実験の結果、幹部メッセージの目的に応じた最適な感情をモデル化し、リーダーへのフィードバック方法を構築することに成功。そして1年後、ようやくサービス化にこぎつけたのである。
(前回のコラム)