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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

2020年7月3日

第7回 アイディアだけでは価値をつくれない。実行力を磨く3つのポイント

アイディアで終わらせない

「失敗を恐れずにチャレンジすること。ヒットにすることにこだわること。この両立を目指してほしい。」

チーム設立に際して中西がメンバーに送ったメッセージだ。

一見矛盾しているようだが、この二つは対立した概念ではない。失敗を恐れずチャレンジする一方で、愚直にカタチにすることにもこだわる。変化の激しい時代において、この二つをあわせ持たなければ、真の意味で新しい価値をうむことは出来ない、ということだ。

設立当初、「仕事を創ることが仕事」であった私たちは、最初の2か月間、徹底的にサービスのアイディア出しを行った。お客さまを足繁く訪問し、ニーズを拾い上げ、サービスの仮説を創り出し、検証する毎日。

いくら頭でよいアイディアが浮かんでも、それをカタチにする段階で頓挫するケースも数多く経験した。データを持っているのは誰か、使用するには誰の許可をもらえばよいか、関係者をどのように巻き込めばよいか…、超えるべきハードルは山積み。これらをひとつずつクリアしていくことで、はじめて道がひらけてくる。

AI」というと最先端で、華やかなイメージを持つかもしれない。しかし実際は、こういった人間臭いアプローチなしに、プロジェクトが成功することはない。

つまり、アイディアそのものに価値があるのではなく、それをカタチにする実行力を伴ってこそ価値がうまれてくるのだ。

実行力を磨け!

それではどのように実行力を磨いていったのか。

私が当時意識していた3つのポイントをご紹介したいと思う。

ポイント1.走りながら考える

新規事業の場合、計画どおりに進むことはまれである。計画を綿密にてるよりも、自分の立てた仮説をプロトタイピングし、顧客にぶつけ、フィードバックをもらうといったサイクルを高速に回す方が有効だ。

「考えてから走る」のではなく「走りながら考える」のである。


こういう話をすると、場当たり的な行動のように思われてしまうかもしれないが、そうではない。仮説検証で得られた数々のフィードバックを元に、思考をらせん階段状に高めていくのである。

走りながら、考えて、考えて、考え尽くすのだ。

ポイント2.自ら覚悟を持つ

中西が権限を委譲してくれたこともあり、私はたいていの意思決定を自分で行っていた。
他人に意思決定を委ねると、言い訳要因がうまれやすく、自分に甘えが出てしまうと思ったからだ。

自ら意思決定していないと、上手くいかなかった時に、どうしても「あの人の判断が間違っていた」とか「自分だったらこうしていた」という思考に陥りがちだ。一方、自ら意思決定すると、結果に対しての責任が発生し、覚悟がうまれてくる。その結果、真の意味で自らへのフィードバックが機能し、改善サイクルが回せるようになる。

つまり「覚悟」とそれを裏で支える「権限移譲」こそ、実行力のエンジンなのだ。

歴史上、やらされ感のある仕事によって世界を変えた人を、私は知らない。

ポイント3.慣性の法則を利用する

新規性の高い仕事場合、周囲からの賛同を得られないことはくある話だ。そうした場合、そのまま正面突破みるのは得策でない。実績も上がっていない状態で「いいね」をもらうのが困難な相手に労力をくのは、両者にとって時間の浪費につながってしまう。

ではどうすればよいか?