Breadcrumb navigation

連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

第23回 人を置いてけぼりに!失敗に学ぶデジタル時代必須の素養とは?

2021年3月1日

大きなうねりを産み出せ

これからAIやデータ活用というのはどの産業にも起きてくる。今までサイバーで閉じていた世界が実世界に飛び込んでくるということだ。自動車や洋服、食品などあらゆる業界のいたるところがセンシングされデータ化されAIで解析される。5Gや6Gといったネットワークの進化により伝達できるデータ容量が飛躍的に増えることが、こういったトレンドをさらに加速させるだろう。

こういった時代に価値を産み出していくには、実世界・現場のナレッジを如何にデジタル化していくかということがポイントになってくる。つまりサイバーでない世界の住人の巻き込みが勝負の鍵なのだ。日本のGDPの大半はこの世界の人達が産み出しており、実はとんでもないポテンシャルを秘めた領域でもある。そしてこの層を巻き込んでいくのに重要なポイントが相手への思いやりである。

世の中にまだない、新しい領域の場合、多くの人はその有効性をイメージできない。お恥ずかしい話、私自身

缶飲料のお茶が商品として売り出された時も
携帯電話にカメラが着いた時も

その有効性を理解できず、現在の様な世の中になるとは全く想像できなかった。

つまり、DXすることで、既存の状態と何がどう変わりどんな価値が産まれるのか、相手がイメージつくカタチで伝えることが必要になってくる。人によって表現やシナリオを変えて説明するというのは非常に時間と労力がかかり、地道な作業でもある。しかし、この時支払うコミュニケーションコストこそ相手への思いやりなのだ。

一見AIやDXといったことに全く関係しないようにみえる内容かも知れない。しかしこれからのデジタル時代で価値を産み出していく人財には必須の素養だと私は思っている。

かつて私が陥ったエゴイスティックなコミュニケーションスタイルでは、大きなうねりを産み出すことは出来ないのだ。

私たちは絶えず高みを目指し上り続けて来たし、これからもその方針に変わりはない。
但しそれは人を先導する形になってこそ意味がある。自分達が出来ていればよい、一部の感度の高い層とだけ出来ていれば良いと言う話ではない。大きなうねりを産み出してこそ顧客や社会がDXされていくのだ。そしてそれが私たちの大きなミッションである。そのためには、先端技術の習得だけでなく、こういった人間としての温かみといったことも同じくらい、いやそれ以上に大切だと思うのである。

執筆者プロフィール
若林 健一
NECマネジメントパートナー株式会社
業務改革推進本部所属
1980年 生まれ
2002年 NEC入社
2018年 NECマネジメントパートナーにて高度化サービス開発チームを設立
経営管理・人事・マーケティングを中心に、データアナリティクスとAIを活用した NECグループの経営高度化について、2年間で200プロジェクト実施
NEC Contributors of the Year2019など数々の賞を受賞
執筆者:若林 健一