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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

第14回 メンバー離脱もリーダーの成果?新しいチームのありかたとは

2020年10月16日

市場価値の高い人財を創れ

設立初年度はプロジェクトの成果創出やカルチャーづくりに重きを置いていたのだが、木本の加入もあり2年目から人材育成に本腰を入れることになった。中西からの要望はただ一つ。「市場価値の高い人財を数多く育てること」だ。


自部門や、自社でしか通用しないスキルや行動様式でなく、市場に晒した時に十分バリューを発揮できる人財を創ること。これがチーム設立から今も変わらない私たちの方針だ。

いくら社会的にブランドの高い企業で働いていても、仕事の中身が将来AIに取って変わられる内容を黙々とこなしていては、市場価値が高い人財にはなれないだろう。また「部長が出来ます」と言うより、「AIアナリティクスのチームを立ち上げ、2年で200PJ以上の実績があります」と言う方が、市場から見た時に価値が高いと判断されるのではないだろうか。

つまり「どこにいるか」や「どのポジションにいるか」ではなく、「そこで何をしているか」の方が遥かに重要なのだ。

組織として作っていくものは、従業員エクスペリエンス

市場価値が高まるということは、当然そのメンバーがチームを離脱するリスクも高くなる。自分で自分の首を絞める事にもつながりかねない。一般的にはリーダーとしてこのように思われる方も多いのではないだろうか。

私はどちらかというと、「在籍してくれるかどうか」というより、「このチームと仕事をしたいと思い続けてもらえるかどうか」の方に主眼を置いている。たとえ、在籍してなくても、卒業生として新しい環境でネットワークを構築してもらえれば、チームとしては多様性の拡張につながるからだ。


在籍有無に関わらず、市場価値が高い人財に選び続けてもらえるチームであるためにリーダーとしていつも心がけていることがある。チームミッションやビジョンへ共感してもらうこと。このチームで働くことを楽しいと思ってもらえるカルチャーを醸成すること。こういった努力なしに有能な人財に選んでもらえると思ったら、大間違いだ。

 

つまりメンバーの市場価値が高まれば高まるほど、リーダーとしての私に危機感が醸成され、チーム運営が健全化されるといった好循環が産まれてくるのである。

そんな考えに至っているのは時代背景も大いに関係している。変動が激しい現在の様な時代において、個人が複数の企業から収入を得る働き方は、今後当たり前のトレンドになっていくだろう。それ故、従業員からも選ばれるといった感覚を持って経営していかなければ、人が離れ(在籍有無だけではなく一緒に仕事をしたいと思えるかを含めて)、事業継続自体がおぼつかなくなってしまう。つまり、ユーザーエクスペリエンスと同様に従業員エクスペリエンスも最大化しておかなければ、持続可能な事業運営が出来なくなるというのが私の見解だ。

自社で働いてもらっている期間が、その人の人生にとって有意義であったと思ってもらえる「体験価値」を提供することこそ、リーダーの務めだと考えている。

組織によってミッションは異なるため、一概には言えないが、私のチームが目指す従業員エクスペリエンス は市場価値が高まる体験だ。会社や役職の看板が外れたとしても一個人として、市場に通用する自分の専門性や強みを身に付けられるチームであること。そのために必要な実践経験や切磋琢磨できる仲間、カルチャーがあること。こういった体験価値を継続してメンバーに提供できるチームを目指して日々奮闘している。

執筆者プロフィール
若林 健一
NECマネジメントパートナー株式会社
業務改革推進本部所属
1980年 生まれ
2002年 NEC入社
2018年 NECマネジメントパートナーにて高度化サービス開発チームを設立
経営管理・人事・マーケティングを中心に、データアナリティクスとAIを活用した NECグループの経営高度化について、2年間で200プロジェクト実施
NEC Contributors of the Year2019など数々の賞を受賞
執筆者:若林 健一