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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~
若林 健一
第12回 どん詰まりでみつけた、「他人のものさし」でない世界を生きるとは?
成長が止まった自分、先が見える将来
「伸び悩んでいるよな …… 」
このチームを設立する直前の私の状況だ。
私は新人時代から15年以上経営管理職の仕事をしていたため、仕事の成長に伸びしろを感じなくなっていた。当然専門性が身に付いた部分はあるが、長く同じ仕事をしてきたことで、人間関係含めて、ある程度慣れで仕事をしてしまう。先人たちのキャリアを見ることで、おおよその自分の将来像も見えてしまう。そんな状態だったのだ。
そこで新しいことへのチャレンジとしてAIやデータ分析の領域に足を踏み入れたのである。
しかし、全くの飛び地へのチャレンジと言う訳では無かった。もともとの業務知見にAIのナレッジを掛け合わせるアプローチでの、いわば半歩程度ジャンプしてのチャレンジであった。
全くのゼロスタートでなく、もともと培ってきた専門性が活かせることで、スタートダッシュが効いたのである。
また掛け合わせが産む価値を感じることもできた。管理会計に詳しい人はNECグループの中だけでも1000人規模で存在するし、AIについて詳しい人も同レベルで存在する。しかしこの二つの領域に両方詳しい人となると意外に少ないことが分かった。一気に希少価値の高い人材になれたのだ。
掛け合わせで独自のポジションを創ることに成功したお陰で、先人のいない世界に突入した。当然先人がいないことで相談出来る人がいない苦しさや、先の見えない不安は絶えずつきまとう。しかしそれ以上に先人がいない、つまり、他人がつくったものさしが無い世界で生きられる喜びの方が大きかった。
「他人がつくったものさし」が生むレッドオーシャン

私は30歳まで陸上競技を続けていたのだが、競技生活はコンプレックスの塊だった。当然好きで続けてはいたものの、ランキングや大会の順位など絶えず他人と比べ、コンプレックスを感じる卑屈な自分がいた。
今から考えると何でそんなことでと思うが、自分の中で「他人がつくった単一のものさし」しか持ち合わせていなかったという事である。走ることの楽しさ、限界へ挑戦することの楽しさなど、考えようはいくらでもあったはずだ。
私の場合、陸上競技の世界で体験したことであったが、他の分野でも同様のことが言えると思う。学歴、収入、役職など他人がつくったものさしだけで価値を推し量っている限り、どこまで上に行ってもキリがない。絶えず世の中には上には上がいるからだ。
ひらたく言ってしまうと他人がつくったものさしで生きるということは、ランキングの世界で、レッドオーシャン化しやすいといういうこと。それに比べて自分の創ったものさしは比較する相手が少なく、希少性も高い。
そしてこのものさしを創る力こそ、このAI時代に重要なスキルになると私は考えている。
(前回のコラム)