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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

第6回 経験の浅さはリーダーにとってマイナスなのか

2020年6月19日

「経験がないこと」こそ武器

よい意味でも悪い意味でも、当時の私には成功体験がなかった。人に自慢できる実績を残したこともなかった。
しかし、このことが新しい取り組みを行う上で武器になった。過去の成功体験や常識に縛られることなく、「とにかくまず動く」「やってみる」という行動様式につながったからだ。

 

私が学生時代に取り組んでいた陸上競技の世界では「インターハイチャンピオン病」としばしば言われていた。一定の成功を経験した人間が過去のトレーニング方法に固執してしまい、変化に対応できずに伸び悩む状態だ。
いくら過去に成果があがったトレーニングであっても、成長に伴い身体が変化してしまうと、効果が出なくなってしまうどころか、怪我につながることさえある。

 

これはビジネスにおいても同様で、これだけ変化が激しく、絶えずゲームチェンジが起こる時代においては、成功体験が邪魔にさえなることがある。
過去の栄光にあぐらをかいていると、あっという間にラストサムライになってしまう世の中なのだ。絶えず考えながら動く、といったスピード感で変化に対応していかなければ、価値は創出し続けられない。

 

歴史を紐とけば、過去の経験に縛られない発想や行動を起こせる、という特権を活かし、若者が世の中に革新をもたらしたケースは多い。
アインシュタインは26歳の時に相対性理論を発表し、吉田松陰は29歳で獄死するまでに多くの人財を育て上げた。

こういう話をすると、若者だけいればよいというように聞こえるかも知れないが、そんな単純な話ではないと私は思っている。

武器を輝かせる、よき大人の存在

私は学生時代、母から戒めを込めてこう教わった。

「若い人だけではダメ。それを支える大人がいるチームこそよい結果を出せる。その人たちへの敬意を忘れないように」と。

つまり、経験のなさは武器になりうるが、支えてくれるよき大人がいてこそ、その武器が輝くのだ。
私自身を例にとっても、攻めの姿勢を貫けたのは、中西や直属上司が、後方の守備を固めてくれるという絶対的な安心感があったからだ。支えてくれている周りの大人へ、感謝の気持ちをもって、よい関係性を築き巻き込んでいくことも、チーム立ち上げにおいて重要なポイントである。

 

よき大人たちに恵まれた私は、この期間とにかく動きまくり、さまざまな部門のニーズを拾い上げ、技術探索を行い、パートナーを探した。おかげで、「なにか、面白いことをやっているチームがいる」と知られるようになり、その後の飛躍につながっていくのである。

執筆者プロフィール
若林 健一
NECマネジメントパートナー株式会社
業務改革推進本部所属
1980年 生まれ
2002年 NEC入社
2018年 NECマネジメントパートナーにて高度化サービス開発チームを設立
経営管理・人事・マーケティングを中心に、データアナリティクスとAIを活用した NECグループの経営高度化について、2年間で200プロジェクト実施
NEC Contributors of the Year2019など数々の賞を受賞
執筆者:若林 健一