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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~
若林 健一
第5回 会社を使ってあなたの「好き」を仕事にする方法
「好きを仕事に」と「仕事を好きに」の違い
今回は、本コラムのストーリーから少し脱線し、前回述べた『会社員でも「好き」を仕事にできる』について、三つの観点から続きを述べたいと思う。
一点目は、「好きを仕事に」と「仕事を好きに」の違いである。両者は似て非なるもので、主にステージの違いだと、私は捉えている。会社員にとって、「好きを仕事に」は、「守破離」でいうところの「破」(改善)や「離」(創造)に近いプロセスであり、「守」(基礎固め)のステージでは「仕事を好きに」というアプローチが有効だ。
まずは、与えられた仕事にしっかりと向き合い、そこで基礎を固める事が重要である。何も実績を出せていないうちから、好きなことだけをやろうとしては、ビジネスパーソンとして失格の烙印を押され、お終いというのが関の山だろう。
それでは、どのようにしたら「仕事を好きに」なれるのか。それはその仕事の持つ本質的な目的を理解することにあると私は考えている。もちろん本人の意識の持ち方もあるが、これには上司の責任も大きい。上司が見えている全体像から、自らの言葉で部下に仕事の意義を語りかけ、「仕事を好きに」させることこそ、上司の仕事だ。「上から言われたからやって」という態度の上司の下では、部下が力を発揮することなど到底出来ないだろう。
白馬の王子様を待つな!
二点目は、どうやって「好き」を見つけるかである。あるネット番組でコメンテーターが、「スキーは上手く滑れるまではつまらない。上達して滑れるようになって初めて、楽しくなる」と話されていた。
これは仕事でも同様で、「仕事を好きに」なり、努力して成果が出せるようになってきて、初めて面白さがわかってくるようになる。さらにいうと、その経験で身に付けた基礎力を応用させる「守破離」の「破」(改善)や「離」(創造)のステージになると、俄然仕事に面白みが増してくる。
つまり、「好き」を見つけるには、何かに打ち込んで努力できる力が重要で、「いつか好きなものに出会える」といった、白馬の王子様的な発想をする暇があったら、さっさと行動に移せということである。
そして、個人的に面白いと感じているのは、何かに打ち込んで、身に付けた「努力の型」は、他分野にも横展開が可能だという点だ。実際、私が通っていた高校(進学校だった)では、部活を熱心にやっていた生徒ほど、偏差値が高い大学へ進学する傾向があった。そういった生徒たちは、部活で身に付けた「努力の型」を受験という別分野に横展開しているのではないか、と担任の先生は分析をされていた。
つまり、何かに打ち込めるというのは、汎用性のある立派なスキルであり、それは経験によって磨かれるということだ。そういった意味でいうと、「仕事を好きに」させられない上司というのは、部下から「努力の型」を身につける機会を奪い、結果として新たな「好き」に出会える機会も奪う。実に罪深いことだと思う。
(前回のコラム)