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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

第3回 新チームの立ち上げ方。私たちが持っていた、たった一つの強みとは?

2020年5月20日

中西律子との出会い

前回のコラムでお話した「ブルース・リー的思考」により、私に一筋の光が見えたのは、NECマネジメントパートナー(以下、NMP)にきて4か月後。業務改革のトップ、中西律子から呼び出されたときのことだ。

ここから私の人生が大きく変わり始めた。

「今度AI活用のデータ分析チームを立ち上げることにした。あなたに、そのチームのリーダーを任せたいと思う。」

中西から、彼女が思い描く世界観を熱く語り聞かされた。さまざまな同業種の企業をベンチマークした結果、NMPの成長戦略としてAIアナリティクスに活路を見出し、そこに投資することを意思決定したという。

中西が取った行動は、今思えば大きく以下の5つに集約される。どれもシンプルで当たり前ながら、「言うは易く、行うは難し」なことばかりだ。 

  1.  
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  3. 1. トップが自ら旗を立てる(創りたいTO-BEの世界を自ら描く)
    2. それを実現できる現場のリーダーを探し、理想を語って火を付ける
    3. リーダーに権限を委譲し自由を与え、大枠の方向性以外は口出ししない
    4. 社内政治のようなことは自分が引き受け、リーダーはチーム立ち上げに専念させる
    5. ヒトと予算を集め、リーダーに預ける(投資する)
  4.  


中西には「あなたはどうしたいの?」という質問をよくされた(今でもされる)。
人事の話にまでそういった質問がくるので、最初の頃は「どうしたいって言われても、そのレベルのことを考えるのは中西さんじゃないの?」と思っていた。

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しかし、そのようなやり取りを繰り返すうちに、私自身がオーナーシップを持って組織作りを考えられるようになっていった。

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もはや上司、部下と言うより運命共同体的な関係、二人三脚のような形でチームを創り上げていったのである。

役職を超えた関係性

私は「マネージャー」と言う職にある。NECグループのマネジメントラインでは、いわゆる中間管理職のポストだ。中西は「本部長」であり、言ってみれば「かなり上の役職の人」である。

ところが、中西が元々フラットな組織構成を指向していることも影響してか、私と中西の間には「上下」という概念があまり無い(と一方的に私が思っているだけで、中西はもっと敬えと思っているかも知れないが)。

指示系統でなく、お互いにお互いのビジョンを共有し合っている関係性だ。
そして、中西の持つ豊富な経営・マネジメントの経験値やシェアード・サービス業界の知見と、私が持つテクノロジーへの知見や妄想力、両者の強みを重ね合わせるというやり方で、チームを立ち上げていった。

この中西と私の関係性は非常に「今っぽい」と感じている。

現在の様な変化の激しい時代においては過去の経験則が必ずしも役に立たず、職制上の上位者が情報の優位性を持っているとは限らないからだ。実際、私が中西から一方的に「こうしろ」と言われたことは現在に至るまで一度も無い(日常的なコミュニケーションを通じて、中西の目指す方向性を大体理解できているために一方的な指示に聞こえない、と考えるのが正しいかも知れないが)。

立場を超えたところでお互いの強みや考え方を補完し合い、より良いものに仕上げていくこのスタイルは、これからの時代あらゆる組織で有効だと思っている。テクノロジーの急激な発達によりスキルの陳腐化が高速に起こる現代においては、旧来のウォーターフォール型の「上司・部下」といったマネジメントスタイルよりも、個人が持つ強みと弱みを突き合わせることでチームパフォーマンスを上げていくポートフォリオ型のマネジメントが主流になるのではないかと考えるのである。