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連載コラム ある変革実践リーダーの荒波奮戦航海記 ~海図のない海をすすむ~

若林 健一

第1回 AI使ってなにかできない? おめでたかった私

2020年3月27日

データが無い!

ニーズドリブン的なテーマの選び方をするとこの点で罠に陥ることがある。

分析の教科書を読むと、目的を設定して必要なデータを揃えるといったアプローチが書かれているのだが、課題やニーズを解決するために必要なデータが現時点で揃っていることは稀で、データ作成に莫大な労力を要することがしばしば起こってしまうのだ。

私たちも漏れなくこの罠に落ちた(笑)。


受注確度予測の例でいうと、きれいなデータが無かったため営業マンの頭の中をヒアリングしてデータ化したり、毎月の予算資料からキーワードを拾いながら、精度が出せるギリギリのラインを目標にデータを1から作るという非常にアナログなアプローチで学習用のデータを作成した。
自分が所属していた事業部であったからこそ、日頃からの人間関係で営業部門は協力してくれたが、全く土地勘のない事業部で行っていたら、このフェーズでプロジェクトは頓挫していたと思う。(協力してくれた営業部門には今でも感謝の気持ちでいっぱいだ)

AIっていう割には、やる作業は非常にアナログだなというのが当時の私の率直な感想で、学習用のデータが完成したのは大晦日の夕方であった……。

目に見えるカタチを残すことの重要性

その後のPOCは順調に進み、高精度のモデルが作成できて一定の成功を収めた。出来た後はひたすらこのPOCのことを喋りまくり、NEC内の各部門にアピールしまくった。

実際にNMPとして行った初めてのAI案件であり、AIを使えばこういうことが出来るのか、ということを幹部層に実感してもらえたことは、その後のチーム創設に向け、かなり大きな推進力を生み出せたと思う。

またこれはやってみて分かったことなのだが、目に見えるカタチが出来るとヒトはああしたい、こういうデータが必要という意見が出始めるのだ。
特にAIのような新しいテクノロジーの場合、パワーポイントの概念図のようなものではヒトはイメージすることが困難で、具体的な事例があってこそイメージが湧く。カタチがあるのと無いのとでは、その後の進み方が全く違うのである。

また協力してくれた営業部門にフィードバックしたところ、受注確度を自動推定するという部分より、その予測モデルから導き出される受注確度を上げる因子が特定できる部分に価値を認めてもらえた。これもカタチがあってこそ、得られた知見である。


ここまで読んでくださった読者の皆様からすると、最初から上手く行ったんじゃないかと思われるかも知れないが、このPOCが終わってから実際にチームが正式に発足するまで1年を要しており、ここから大きな暗黒時代を迎えるのである。

執筆者プロフィール
若林 健一
NECマネジメントパートナー株式会社
業務改革推進本部所属
1980年 生まれ
2002年 NEC入社
2018年 NECマネジメントパートナーにて高度化サービス開発チームを設立
経営管理・人事・マーケティングを中心に、データアナリティクスとAIを活用した NECグループの経営高度化について、2年間で200プロジェクト実施
NEC Contributors of the Year2019など数々の賞を受賞
執筆者:若林 健一