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プロジェクト遂行の責任はプロマネ一人で負うべきか
PJ活動お役立ちコラム
第75回 2022年5月3日
プロジェクト遂行の責任はプロマネ一人で負うべきか

今回は「プロジェクト遂行の責任はプロマネ一人で負うべきか」というテーマでお話します。これは以前、「プロジェクトマネージャーの役割を根本から見直したい」という内容をご紹介しましたが、今回はその後編となります。ご記憶にない方は、第58回2022年1月4日のコラムをご参照ください。
現代は、技術の高度化、複雑化が進み、開発者や開発を指揮するプロジェクトマネージャーの職責は従前にも増して重いものとなり、開発関係者の身体的、精神的負担は増える傾向にあることはご承知のとおりです。中には世界初の技術開発に挑むプロジェクトなどもあり、こうした流れは今後も継続するものと思われます。
このような状況の中、PMBOKも第7版に改訂され、12個のPMプリンシプル、8つのパフォーマンスが定義され、プロマネの役割と責任はより一層重くなったように感じるのは筆者だけでしょうか。
また、現在はVUCAの時代と言われるように、企業活動においてもなかなか正解と呼べるものを見出しづらい不安定(Volatility)・不確実(Uncertainty)・複雑(Complexity)・曖昧(Ambiguity)な状況となり、せっかく新しく作った製品、サービス、市場もすぐに成熟化、陳腐化してしまう将来予測の困難な時代となっています。
こうした時代背景は、単にプロジェクトマネージャーの抱える負担増の問題に限らず、一人ひとりのビジネスパーソンとしても非常にやりづらく、お世辞にも生きやすい時代とは言えなくなっていると思います。もはやサラリーマン(ビジネスパーソン)は、とっくの昔に気楽な稼業などではなく、生き残りをかけたシビアで熾烈な稼業となっています。
こんな時代だからこそプロジェクト型業務の意味がある
技術も高度になり、企業活動も難しさを増す現代社会において、プロジェクト業務の持つ意味は従来よりも格段に高まっています。あらかじめ進め方や解がすべて明確になっているルーチンワークの場合と異なり、想定外のリスクも発生しがちな業務環境において、プロジェクト型で進める業務は、何も開発系など技術系の職務に限らず、少し大袈裟に聞こえるかも知れませんが、世の中の活動はすべてプロジェクト型で進めるべきものだと筆者は考えます。
ところが、プロジェクトの成功確率は、決して高くないのが実情です。世界平均で約30%台半ば程度という統計もあります。この背景にはプロジェクト遂行そのものが難しくなっていることに加え、そもそもプロマネの負担が大き過ぎることが原因のように思います。
役割を分担することがプロジェクト成功の鍵
あらゆることが得意で知識と経験も豊富な一部のスーパービジネスパーソンを除き、筆者を含め多くの人には不得意なことがあるのが現実だと思います。半面、ある特定の領域に関しては誰にも負けないチカラを発揮できる人も多いと思います。
開発プロジェクトに関して言えば、技術にはそれほど詳しくなくても、コミュニケーションや管理スキルはズバ抜けて得意な人もいるでしょう。逆に技術には明るいが、管理系業務や各種調整が苦手な方もいるでしょう。そういう人たちでも自信と誇りを持ってプロジェクトに関われる状況を創りたい、というのが筆者の願いでもあり、またこうした状況にしなければ、現在のプロジェクト社会を乗り越えることはできないと考えます。
どんなにPMBOKの定義が大変で複雑なものになろうと、技術が高度化・複雑化しようと、また、社会活動そのものが複雑になろうと、その中で自分の得意な領域がありさえすれば働きがいや生きがいを見出せる世の中になってもらいたいと思います。誰にも負けないものを持ったプロフェッショナルたちが集まれば、プロジェクトの成功確率や成果物の品質も高まる可能性が増し、反対に一人ひとりの負担は軽減できるのではないかと思いますが、皆さんはどのように思われるでしょうか。
この問題は、プロジェクト・コスト(特に人件費)そのものの問題とプロジェクト・リスク・コストや品質損失コストとのトレードオフも絡んでくるため、単純な話ではないことは承知しています。皆さんにとってプロジェクトの持つ意味やプロマネやプロジェクト関係者の役割を考えるきっかけになれば幸いです。