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任されて困る仕事もある
PJ活動お役立ちコラム
第73回 2022年4月19日
任されて困る仕事もある

ちょうど1回前のコラムで「権限移譲」について語りましたが、今回は少し違う視点で権限移譲について考えてみたいと思います。
任されても困る仕事がある
プロマネは、プロジェクトを統率する役割とプロジェクトを成功させる責任を与えられています。その責任を果たすために、上位者あるいは上位組織から一定の権限を付与されています。その一部を切り出してメンバーに移譲するのが、「権限移譲」です。が、あらゆる権限を自由に切り出して移譲できるわけではなく、ときに決して切り出せないタイプの仕事があります。
ある程度経験を積めば自然に切り分けできるのですが、とくに経験の浅いプロマネはそこで失敗しがちです。
先だって、とあるプロジェクトでこういう場面を目にしました。
プロマネからあるサブチームの運営を任されている若い担当者が、顧客との定例会の場で、次年度の開発体制について相談を持ち掛けようとしたところ、顧客が不満そうに「なぜあなたがその話を持ってくるのか。あなたの上司(プロマネ)と話しをさせてくれ」と発言し、持ち帰りになりました。とても小さな事件ですが、権限移譲の難しさを象徴する場面と感じました。
プロマネの責任
プロジェクトの種類にもよりますが、筆者は「人のアサイン」と「顧客との合意形成」はプロマネ自身がやらなければいけない、他者に移譲することができない職務領域と考えています。
事前の下調べや資料作成、意見聴取などは担当者に指示して代行してもらえたとしても、結論を出すのはあくまでプロマネその人。プロジェクト全体の枠組みを決める設計フェーズでの人員配置や要件定義はもちろん、SLAやSOWの取り決め、機能要件ごとの性能目標や試験日程のすり合わせ、価格調整、そして先ほど問題になった開発体制の見直しが必要になった場合など、およそ「合意形成」が重要になる場面は、人に任せてはいけません。それはなぜでしょう。
一言でいえば、責任を取れる人が交渉を行う、ということです。交渉・調整した結果に対してもし疑問点や不明点が残っていた場合のことを想像してみてください。プロマネはプロジェクトを成功させる責任があります。SLAやSOWを曖昧にしておけませんから、あらためて顧客と調整を行うことになるでしょう。ところがその顧客からしてみたら、一度合意したはずのことを、日を置かずに再調整させられるのです。信頼関係にも影響が出てしまいかねません。
交渉・調整を行った担当者もまた、気の毒です。自分の裁量に任されていたはずが、自分の頭越しに交渉が行われ、自分ではない人たちの手で意思決定が行われてしまうわけですから。「だったら最初から自分でやってよ」という感想を持つかもしれません。これは、その担当者に交渉・調整を任せてしまったプロマネ自身の判断ミスと言わざるを得ません。
適切な権限移譲を行うこと
もちろん、だからと言ってすべてをプロマネ自身が行っていては、時代のスピードに付いていけません。一定以上の規模の組織やプロジェクトでは、適切な権限移譲を行うことはチーム力・組織力向上にもつながる重要なアクションです。権限移譲を受けることで、メンバーのスキルやパフォーマンスが飛躍的に活性化されるケースも少なくありません。もちろん、プロマネ自身がコア業務に専念する時間を増やす意味でも効果的です。権限移譲を行うことは、現代のリーダーの重要なスキルの一つとも言われています。
今回のように交渉・調整ごとのように「相手」がいる仕事を誰かに預けようとする場合は、結論を聞いて自分が結論をひっくり返す可能性を考えてみてください。それが性質の悪い「丸投げ」なのか、筋が通った権限移譲なのか、判定できるはずです。
みなさんの活動に少しでもヒントになりましたら幸いです。