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マニュアルの持つ力をナメてはいけない(後編)

PJ活動お役立ちコラム
第41回 2021年09月07日
マニュアルの持つ力をナメてはいけない(後編)

今回は前回に引き続き、「マニュアルの持つ力をナメてはいけない」というお話をします。
前回は、長年マニュアル作成を生業としてきた我々が感じることとして、プロジェクトマネジメントにおいても、一つひとつの貴重なプロジェクト体験を丁寧にマニュアルに落とし込んでいくことが、プロジェクトで同じ過ちを繰り返さないための施策として重要であることをお伝えしました。今回は、このようなマニュアルを作る際に、ぜひ気にかけていただきたいことについてお話しします。

マニュアルには言霊(コトダマ)を宿らせる

一つひとつの貴重なプロジェクト体験を丁寧に落とし込んだマニュアルを作る際、ぜひ気にかけていただきたいことが二つあります。ここでは読み手の立場で分かりやすい表現を心がけることは割愛します。では、何に気を付けるべきなのか。

一つ目は、「どのような立場で作っているか」ということを強く意識することです。
通り一遍の言葉を羅列して作っても、無機質なマニュアルとなり、読み手の心に響くものはありません。そもそも、誰も読まない形骸化したマニュアルになるだけです。重要な視点は、「痛い目に合った」先人の知恵を提供する立場を強く意識し、絶対に後輩や他者に同じ過ちを繰り返させないという「強い使命感と想い」をもって作成することが非常に大事になります。我々の業界では、「一文入魂」という言葉があります。まさに一つひとつの文章に魂を込めるように書いていくことが、読み手の感情を動かし、同じ過ちを繰り返さない予防行動を引き出す大きな原動力となることを理解いただければ、と思います。

二つ目は、「具体的に書く」ということです。
プロジェクトで何かの予兆を見落とし、その結果失敗してしまった経験や最後までリカバリできなかった経験があるなら、次のプロマネには、単にプロジェクトの特性や進め方のプロセスだけを示すのではなく、「なぜ失敗したのか」、「どのタイミングで何に気を付けなければいけなかったのか」、「発注者(発注企業)の性格的な特徴」、「プロジェクトメンバーや協力ベンダーの得意・不得意なこと」などを事細かく具体的に拾い上げて表現していくことがとても重要だと思います。たとえ表現は稚拙だったとしても、このようなマニュアルを事前に準備しておけば、読み手(次プロジェクトのプロマネや開発メンバー)に多くの気づきを与え、同じ過ちを繰り返さないようにするための有効なツールとなり得ます。

マニュアルを若手の育成に活用する

変化の激しい現代において、新入社員や新しく組織に参加したメンバーが、いかに即戦力としていち早く立ち上がってくれるかどうかは、とても大事な問題です。現在、基本的な業務の進め方やマナーを示したマニュアルは、どこの組織にも用意されていると思います。それはそれで大事なことですので問題はないのですが、今の時代に求められているのは、即戦力メンバーの育成をいかに早くできるかだと思います。要は、いかに早く実践知を身に着けてもらうかの勝負だと思います。上司や先輩社員が、その都度口頭で指導する場合と、マニュアルを使って指導する場合とでは、時間的に3倍の開きがあると言われています。そのマニュアルには実践知を、言霊を宿して伝えれば、即効性はさらに高まると考えますし、実際にそのような事例を目にしてきました。

皆さんの中には、「たかがマニュアルでそんなばかな」と思われるかも知れません。しかし、「たかがマニュアル、されどマニュアル」ということをお伝えしたくてこのようなお話をさせていただきました。もし「たかがマニュアルで」と思われるなら、皆さんの身の回りのマニュアルが「たかが知れるレベルでしかない」からかも知れません。

今回の内容が、お役に立てば幸いです。