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マニュアルの持つ力をナメてはいけない(前編)

PJ活動お役立ちコラム
第40回 2021年08月31日
マニュアルの持つ力をナメてはいけない(前編)

今回は「マニュアルの持つ力をナメてはいけない」というお話をします。
みなさんは「マニュアル」と聞くと、どんな印象をお持ちでしょうか。新しい製品を購入したときに使う取扱説明書や、たとえば何かの業務手順を要領よくまとめたオペレーション・マニュアルなどをイメージされる人が多いと思います。あまり普段意識していないと思いますが、実は世の中にはマニュアルがあふれています。しかし、このマニュアルに対する世間の関心度の低さや、そもそもマニュアルに求める役割や機能に関して、少し誤解があるように思っています。

無機質なマニュアルでは人の感情は動かない

当社では四半世紀以上にわたり、ハードウエア製品、ソフトウエア製品を始め、ITシステムの使い方や業務手順のマニュアル作成を行う「ドキュメント事業」の歴史があります。近年は製品のGUI(グラフィック・ユーザー・インタフェース)の発展により、以前に比べると、製品系のマニュアルに対するニーズは小さくなり、その部分の事業規模はかなり縮小傾向にあるのも事実です。しかし、そんな状況下においても、ドキュメント事業は継続しています。初心者が読んでも分かりやすくなるような表現上のさまざま工夫を凝らすことはもちろん、誰が作業しても常に同じ結果が得られるようにすることがマニュアルの大きな役割だと考え事業を遂行しています。

マニュアルと聞くと、画一的で無機質な印象を持たれることをあらかじめ想定し、マニュアルの属性(トリセツか業務系か)や製品特性(ハードかソフトか)など、それぞれの状況や利用環境に応じて硬軟使い分けたイラストの使用や言葉遣い、さらにマニュアルの提供形態などにも最適化を施しています。単に手順を説明しているだけの難しく取っ付きづらいマニュアルでは、誰も使おうとは思わず、そもそも何のためのマニュアルなのか?という問題が生じます。表現上の分かりやすさだけを追求するのではなく、徹底的に読み手の立場に立ち、読み手の心を動かす(感動を想起させる)ことを目的に事業を遂行しています。

「マニュアル化できない」ものはない

このように、長年マニュアル作成を生業としてきた我々が強く感じることは、世の中で「マニュアル化できない」ものはない、という実感です。現在、当部門の旗艦サービスは、ドキュメント事業から開発プロジェクトをマネジメントの視点からサポートする事業(所謂、PMO)や開発プロジェクト関連のコンサルティング事業へと転換していますが、一見、型や進め方が決まっているルーティンワークとは程遠い存在のプロジェクトマネジメントにおいても、実体験をマニュアル化しながらプロジェクトを進めているプロジェクトマネージャー(以下、プロマネと表記)と、そうでないプロマネとでは、明らかにプロジェクトの成功確率が異なることに気づかされます。

一つひとつの要素技術が高度化され、システム開発も高度化、複雑化する昨今の開発プロジェクトにおいては、プロジェクト推進に関するベテランプロマネの暗黙知ばかりが蓄積される傾向にあります。また、ときにはベテランのプロマネですらプロジェクトを当初計画どおりに進めることが困難なぐらいプロジェクトには不確定要素が多く潜んでいます。そこには、あらかじめ想定できるリスクだけではなく、やってみて初めて顕在化するリスクも数多くあります。それ以外にも想定外のリスクが突然発生し、対応に右往左往するケースも日常的に起きています。

そこで、こうした一つひとつの貴重なプロジェクト体験を丁寧にマニュアルに落とし込んでいくことが、同じ過ちを繰り返さない(繰り返させない)ための施策として、とても重要になってきます。
では、このようなマニュアルを作る際に何に気を付けるべきなのか、ぜひ気にかけていただきたいことについて、次回後編でお話ししたいと思います。

マニュアルの持つ力をナメてはいけない(後編)