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MECEを使いこなすコツ

PJ活動お役立ちコラム
第189回 2024年9月10日
MECEを使いこなすコツ

過去にロジカルシンキングを学んだ方はもちろん、ビジネスパーソンとしての経験が浅い方の中にもMECEという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
MECEは、「相互に重複なく(Mutually Exclusive)集合体全体として漏れがない(Collectively Exhaustive)」を略した言葉で、ロジカルシンキング(論理的思考)の基本的なフレームワークとして知られています。
物事を要素ごとに分けて整理する際、漏れや重複があると、論理に隙や矛盾が生じ、結論の信頼性が損なわれる恐れがあります。そこでMECEを意識することにより、論理的な検討がしやすくなり、説得力のある結論を導きやすくなります。

筆者もMECEについて研修などで学んだことがあります。しかし、実際の業務において、MECEになるように情報整理をしているつもりでも、途中で行き詰まってしまったり、後戻りが発生して時間が足りなくなったりすることがあります。
MECEを単なる知識としてではなく、効果的に活用するためには、どのような点に留意すべきでしょうか?
今回のコラムでは、下記の書籍を参考にして、ロジカルシンキングの基本であるMECEを有効活用するためのポイントについて考察したいと思います。
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著者:和氣 忠
書名:なるほどイシューからの使えるロジカルシンキング
発行所:かんき出版
発行年:2023年7月
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全体観を正しく設定する

多少の重複は後から修正・調整することが可能ですが、漏れがあるまま検討を進めてしまうと、詰めが甘く偏った結論に陥りやすくなります。
そのような事態を防ぐためには、目的を明確にし、解決したい問題全体を俯瞰して観察し、理解する必要があります。
その際、全体としてとらえるべき範囲の境界線(どこまでが「IN」でどこからが「OUT」か)となる「全体観」を正しく見極めることが重要である、と著者は述べています。

全体観を設定した後でも、検討が行き詰まった際には、この境界線の範囲を拡げてみることで新しい解が見つかることがあります。このとき、特に反対側(相手)の立場の視点や上位目的を意識して全体観の「IN」に取り込み、俯瞰してみることを著者は推奨しています。

例として、車の価格交渉の場面を考えてみましょう。車の購入を検討している買い手が値下げを要求していますが、売り手はこれ以上の値下げに踏み切れない状況です。設定している全体観が「より安く買いたいvs現行価格のまま売りたい」のままでは、お互いの主張が平行線のまま解決の糸口が見つからないように思えます。
売り手側がこの全体観を「買い手は車を安く買いたいだけではなく、購入してから快適に・お得に乗りたい」まで拡大・再定義してみると、どうなるでしょうか?
車両のメンテナンス(オイル交換や点検サービスなど)に利用できるポイントを付与する・保証期間を延長するといった、価格の正当性を理解してもらえる新たな切り口が見つかりそうです。
このように、全体観を拡大・再定義することで、それまでの全体観では行き詰まっていたことが、別の角度から解決に至ることがあります。

100%のMECEよりも納得感のあるMECEを目指す

MECEを使う際、重複や漏れが100%ないことを追求するべきかというとそうではありません。重要なことは、目的をおさえて導いた結論を、相手が納得できるように説明することです。
筆者自身、議論の場で使用する資料を作成する際に、全てのポイントを網羅しようとした結果、重要な論点が曖昧になり、混乱を招いてしまったという苦い経験があります。ビジネスの場でMECEを使う際には、完璧を目指すよりも以下の点に注意を払うことが重要です。

  • 相手が重視しそうな要素を考慮できているか
  • それらの要素に偏りがないか
  • 最終的な目的を達成するための要点がしっかりと含まれているか

これらの注意点を押さえることで、相手にとってわかりやすく納得のいく説明が可能になります。
MECEのフレームワークを用いる際には、理論通りに完璧を追求するのではなく、実際のビジネスシーンに柔軟に適用することが成功へのカギとなるでしょう。

さいごに

著者は本書の中で、「ロジカルシンキングは特別な専門スキルではなく、練習を重ねることで後天的に獲得できるスキルである」と述べています。
今回ご紹介したMECEはロジカルシンキングの基本ですが、様々なシーンで活用できるフレームワークです。ビジネスシーンにとどまらず、日常生活においても意識して取り入れてみてはいかがでしょうか。
今回の内容が皆様の活動に少しでもお役に立ちましたら幸いです。

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