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任せて伸ばす

PJ活動お役立ちコラム
第163回 2024年1月23日
任せて伸ばす

忙しくなることがわかっていても、「自分でやったほうが早いから」と他の人に任せることを躊躇したり諦めたりすることはありませんか?
もしかすると、優秀なプレーヤーの方こそ心当たりがあるかもしれません。
実際、経験豊富で能力もある方は、周囲の期待を受けてたくさんの仕事を抱え、他の人に任せられないまま、業務や役割がどんどん増えていく、というケースが多いように感じます。

今回のコラムでは、相手を信頼して任せることの重要性と、相手の成長につながる任せ方のコツが説明されている本を紹介します。
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著者:山本 渉 
書名:任せるコツ
   自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”
発行所:株式会社 すばる舎
発行年:2023年7月
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「自分でやったほうが早い」は今だけ

リーダーとしてのふるまいや他部署との調整の進め方といった、マニュアル化が難しい領域においては、経験の浅いメンバーの育成に時間をかけるよりも、自分が動いたほうが良い成果を出せると感じられることも多いでしょう。

しかし、そこには限界があることを本書は指摘しています。
そのプロジェクトのことだけを考えると「自分でやったほうが早い」かもしれませんが、長いスパンでとらえると、メンバーの主体性やチームとしての成長の機会を奪うことになりかねないからです。
VUCAの時代においては、メンバー全員が主体性を持ち、多様な価値観としなやかさのある「団体戦で戦えるチーム」が求められていることを意識する必要があります。

任せ方のコツ

では、こうした意識を持って、いざ他のメンバーに任せる場面ではどのように依頼すると効果的なのでしょうか?
本書では多くのコツが紹介されていますが、その中でも筆者が特に重要だと感じた3つのコツをご紹介します。

  1. 目的を明確にして依頼する
    タスクを点で伝えるのではなく、その意図や意義を伝えて全体像がわかるようにする
  2. 相手が断ることができる余白を残して依頼する
    相手の選択肢の提示と負担への配慮を伝える
    例:「難しい場合は気にせず断ってください」「最近忙しそうですが、できますか?」
  3. 「褒める」とセットで依頼する
    相手のことをよく見ている・評価していることも、依頼とともに伝える
    例:「この間の企画書がとても評判だったので任せたい」

これらを意識しながら伝えることで、相手にとって少しハードルが高い内容でも、相手の意欲を高めることできます。

任せ切る勇気を持つ

とはいえ、遠回りしているところを見ると、つい細かく指導したくなってしまうものです。
しかし、任せるのであれば中途半端に任せるのではなく、相手を信じて任せ切ることを、本書では推奨しています。

  • 多少、自分の考えや進め方と違っていても目をつぶる
  • 小さな失敗はむしろ積極的に経験させる
  • 取り返しのつかない大事故にならないようにだけ見守る

こうしてみると、前提として「失敗しても大丈夫だ」と思える環境(心理的安全性)を確保することが重要だとわかります。

さいごに

「最終ゴールは『自分のクローンを作ること』ではなく、『自分が不要になること』である」と著者は語っています。

このコラムを執筆しながら、初めて本物の包丁を使ったときのことを思い出しました。
見守る大人たちは慣れない手つきにハラハラしただろう思いますが、途中で取り上げたりせずに「やってごらん」と最後まで任せてくれました。慣れないうちは指を怪我することもありましたが、それも上達や自立には欠かせない経験だったと感じています。

今回の紹介が皆さんの活動の一助となりましたら幸いです。