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人間の仕事として残るものは?
PJ活動お役立ちコラム
第160回 2023年12月26日
人間の仕事として残るものは?

少し前のことになりますが、8月31日、9月1日の二日間、プロジェクトマネジメント学会の2023年度秋季研究発表大会に参加し、各社の研究成果を聴講してきました。
プロジェクトの現在の状況から将来を予測する取り組みが、複数発表されていました。予測の対象フェーズが限定されていたり、予測精度に課題があり手法を検証中だったり、完全に予測可能になっているわけではありませんでしたが、ガートナー社による、2030年までに、AIが導入されることによって、現在のプロジェクトマネジメントのタスクの80%が肩代わりされるだろうという予想が、現実味を帯びつつあると感じました。
タスクの80%がAIに置き換えられた先には、何が人間の仕事として残るでしょうか。
意思決定
AIによって、プロジェクト状況の可視化は自動化され、問題を早期にキャッチできるようになるでしょう。さらに進んで、その問題の解決策の提案を受けることも可能になるかもしれません。
プロジェクトマネージャー(人間)は、AIによって可視化された状況や提案を評価し、問題解決のためにどの施策を実行するのか、またはしないのかを決定する必要があります。AIの予測精度が高くても、AIの提案を選択せずに、戦略的な判断によって、敢えてリスクを取った施策を実行する場合もあるでしょう。
リーダーシップ
施策を実行し、プロジェクトを成功に導くためには、チームメンバーの共感や士気を高め、チームのパフォーマンスを最大限に発揮できるようにすることも重要です。AIがメンバーの共感や士気を高める、いわゆる感情に訴えかけることは難しいでしょう。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトチーム内で良好なコミュニケーションを確立し、チームメンバーの共感や士気を高める方法を考え、チーム全体の協力体制を構築することが求められます。
コミュニケーション
ステークホルダーとのコミュニケーションもプロジェクト成功のためには重要なポイントです。顧客の抱える課題やニーズは、顧客の企業文化、価値観や信念、バックグラウンドによって異なります。
プロジェクトマネージャーは、それらを理解、考慮し、戦略を調整しなければなりません。顧客の真の課題を明らかにし、それに向き合い、顧客と対等なパートナーシップ関係、信頼関係を築くことは、QCD達成以上に、顧客の満足度を向上させるでしょう。
さいごに
AIの活用には、データが必要です。現状では、データはあっても、様々なファイルフォーマットやシステム上に分散しており、且つ、品質の悪いデータも混在しているのではないでしょうか。これらを収集、クレンジングし、学習用データとして使えるようにするには、労力がかかります。このプロセスを想像するとまだ先のように感じますが、AI活用の波に逆らうことはできないでしょう。
人間の仕事として残るものとして、意思決定、リーダーシップ、コミュニケーションの3つを挙げましたが、もしかしたら、これらも不要になる日が来るかもしれません。
ステークホルダーの特性もデータ化され、背景など企業文化を考慮した戦略がAIから提示されるようになるかもしれません。極端なシナリオですが、チームのメンバーは人間ではなく、士気を高めるようなリーダーシップも不要になるかもしれません。
そんな未来に不安を抱くのではなく、変化を受け入れて活用する、準備と柔軟な思考が私たちには求められているのだと思います。
今回の内容が皆さんの活動に少しでもお役に立ちましたら幸いです。