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手順書作成時の心掛け

PJ活動お役立ちコラム
第158回 2023年12月12日
手順書作成時の心掛け

日常生活の中で様々な「手順書」を利用する機会があります。
「手順書」とは、事前の準備や作業手順、作業時の注意事項など、作業に必要な内容を具体的にまとめたものです。手順書に沿って作業することで個人の経験やスキルに関わらず、誰でも同じ結果を出すことが可能となります。
手順書の作成なんて誰でもできるのでは?と考える方もいると思いますが、利用者にとって使いやすい手順書を作成するには、意識するべきポイントがあります。筆者の経験をもとに、手順書を作成する際のポイントについてまとめてみました。

手順書の現実

日常生活で利用する手順書を読むことで、誰でも同じ結果を出せているのでしょうか。このような手順書を見かけたことはありませんか?

  •  注意文が多く、何をすればよいのか、情報を見つけにくい。
    注意文を目立たせるために赤文字や黄色の背景が使われることが多く、本文よりも注意文の方に目を奪われてしまうことも。
  • ○○~でもできます、××~すると便利です、などの補足情報が多すぎる。
    自分がやらないといけない作業はどれなのかわかりにくい…
  • 手順通りに進まないと思ったら、手順の冒頭に記載された大量の注意文の中に埋もれていた。
    注意文の記載場所が間違っているのでは?

このような使いにくい手順書を、赤字の注意文が目立つことから、筆者は「赤い手順書」と呼んでいます。手順書を作成した人は、手順書を利用する人(以降、利用者と呼びます)が間違えないように検討して執筆しているはずですが、なぜ利用者にとって使いにくい手順書が生まれてしまうのでしょうか。

「赤い手順書」が誕生する理由

筆者は手順書を作ることも、使うことも機会が多くありますが、改めて理由を考えてみると、「利用者の目線で書かれていない」ことが主な理由だと思います(インターフェースに問題があるなど、作業対象自体の問題は除きます)。
利用者の目線で書かれていないと、次のような内容になる可能性が高くなります。

  1. できないこと(制限事項)や注意事項が多く書かれる
    利用者からの問い合わせに対して、できないことや注意事項を漏れなく書いた方が「手順書に書いてあります」として効率化できますが、利用者の目線に立った手順書ではなくなっています。
  2. 伝えるべき手順が整理されていない
    1.とは逆に、様々な機能を利用できるシステムで起こりうるケースです。利用者が必要な情報をAだとすると、Bでもできます、Cでもできます、など複数の情報を提示することで、手順書本来の目的(手順に従うことで、誰でも同じ結果を出す)から外れてしまいます。
  3. 必要な場所に情報が書かれていない
    手順冒頭に注意がまとめて記載されていることがあります。作業前に理解したうえで進めて欲しいのだと思いますが、必要な場所に記載されていないと、利用者は注意事項があることに気付きません。

手順書作成時のポイント

前述した点の逆の状態となるように注意すれば、手順書は利用者の目線に近づくことになります。

  1. できないことや注意事項は必要最低限とする
    内容を熟知している人が作成する場合、利用者が間違えないよう、情報量を増やしてしまいがちですが、できないことや注意事項は、手順どおりに進めるうえで最低限必要な内容のみ記載します。
  2. やらなければいけないことだけを示す
    必要な作業と結果だけを示すことで、利用者が迷う可能性を減らすことができます。便利な方法や複数の方法がある場合には、一番シンプルな方法や全体で統一感のある方法を示すと、利用者のスムースな理解にも繋がります。
  3. 情報は必要な場所に記載する
    注意書きを手順冒頭にまとめられている手順書をよく見かけますが、利用者は手順どおりに読み進めて、作業を進めます。手順冒頭に記載する注意書きは、手順を始める前に必要な内容だけを記載して、手順に関係する注意書きは該当する手順に記載する必要があります。

さいごに

コラム執筆にあたり、筆者が初めて手順書を作った際、親切心から、あれもこれもと情報を記載していたことを思い出しました。今回ご紹介したポイントについて上司の指導があり、手順書の作成を重ねることで、「赤い手順書」製造から脱却できたと筆者は思っています。
顧客の要望や手順書のページ数の制約などで、今回挙げたポイント全てを満足する手順書を作ることが難しいこともありますが、手順書の目的(手順通りに実施すれば同じ結果が得られる)を忘れずに、利用者の目線に立った内容とすることで、「赤い手順書」を作り出す可能性を減らせます。
手順書を作成する際に、今回の内容が皆さんの活動に少しでも参考になりましたら幸いです。