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会議体における認識の整合について
PJ活動お役立ちコラム
第136回 2023年7月4日
会議体における認識の整合について

プロジェクトの遂行においては、その目標達成に向け、複数のメンバーが共同して進めていきます。しかし、その過程においては様々な問題が生じ、円滑な推進が妨げられることもよく見られます。今回はメンバー間で認識が異なる事象を取り上げ、その原因と対策について記します。
認識を整合する大切さ
「思っていたのと違っていた」、「その点は認識していなかった」、「そんなことは聞いていない/いや、伝えた」... メンバー間での認識違いは、どのような問題につながるでしょうか。
例えば、作業を進めるうえでの条件の解釈が異なった場合、要件を満たさないアウトプットが出てくる可能性があります(品質への影響)。開発工程で言えば、それは「仕様の不備」に相当し、その結果手戻り対応が発生します(期限とコストへの影響)。また、「言った/言わない」の水掛け論が生じると、余計な時間がかかるだけでなく協力意識やモチベーションに悪影響を及ぼす恐れもあります。
認識の齟齬が起きる原因
このような事象を防ぐために、会議体を開催して情報共有や意見交換を行い、認識の整合を図ることが行われます。しかし、「会議でちゃんと議論したはずなのに、メンバー間で認識にズレが生じてしまった」こともしばしば見られます。その原因は様々ですが、今回は以下の3点を挙げます。
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議論するうえでのテーマが明確でない
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話す相手の前提知識を踏まえていない
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議論した内容が記録されていない
最初の「議論するうえでのテーマが明確でない」とは、「今回話し合う議題は何で(目的)、決定すべき事項は何か(ゴール)」が明示されない状態で会議が進められることです。目的とゴールが不明のまま、互いが互いの立場から意見を述べたところで焦点が合わず、「いろいろと話したし意見も出たけど、結局何も決まっていない」ことになります。したがって、議論を始める前に「認識を合わせるべき対象を明らかにし、また、どのような状態をもって認識の整合ができたと判断するか」を明示することが必要です。
二点目の「話す相手の前提知識を踏まえていない」とは、スタート地点を合わせるということです。議論を開始する時点で、前提として踏まえておくべき事項への解釈が異なっていた場合、その後の意見も食い違い認識を合わせることはできません。プロジェクトの課題や背景、経緯、現在地、メンバーの役割といった前提を明らかにし、確認しながら合意を得る必要があります。
最後の「議論した内容が記録されていない」状態では、メンバー間で情報が共有されないためそれぞれの認識が曖昧なままとなり、整合が取れない状態が続きます。
認識の齟齬を防ぐには
回避策としては、まず上記に挙げた原因への打ち返しが考えられます。
進行係は、会議の冒頭に議題(テーマ)と議論のポイントを明示し、何をもって議論の完了・決定とするか、目的とゴールを明らかにします(原因1.への対応)。また、初回の会議であればプロジェクト全体の概要を、継続する会議であれば前回までの経緯を示し、前提知識を揃えます(原因2.への対応)。さらに、事前に議事記録係をアサインしたり、会議ツールの録画機能や文字起こし機能を活用したりすることで、確実に記録を取るように図ります。併せて、議論を進めるうえでは決まったこと(決定事項)と課題への行動(アクションアイテム)を明確にするようも配慮します(原因3.への対応)。
さらに、上記に加えて以下の二点も重要と考えます。
- 議論する事項に関し、同じ情報を見える形で共有する(ビジュアライズ)
- 使用する用語に配慮する
音声だけのやり取りは議論の内容と状況が分かりづらく、認識の齟齬を生じさせることにつながります。アジェンダや各種資料を用いてビジュアライズすることで議論の焦点が絞られ、互いの認識の齟齬を防ぐことができます。
また、議論の場で知らない言葉が出てきた場合、思考や理解が止まったり、その後の議論で食い違いが生じたりします。進行係は、参加メンバーの担当業務や知識量、熟練度、スキルレベルなどを考慮して「同じ言葉が同じ意味で理解されるか」を意識し、必要に応じてその場で言葉の意味を確認するといった配慮も必要になります。
終わりに
今回は認識を整合することの大切さと、齟齬が生まれる原因およびその回避策の一例を示しました。ただし、実際のプロジェクトにおいては、これらとは別の原因が存在することが想定されます。そのため、最も重要なことは、「常にメンバーの様子を観察しながら認識合わせをし続けること」だと考えています。
今回のご紹介が皆さんの活動のご参考になりましたら幸いです