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標準化が失敗する要因を考えてみる

PJ活動お役立ちコラム
第119回 2023年3月7日
標準化が失敗する要因を考えてみる

皆さんが、日常業務やプロジェクトにおける問題に対し、その原因を明らかにして解決手段を講じる活動を進める中で、「標準化」を検討することはよくあると思います。特に問題の要因がさまざまな「バラツキ」であった場合、標準化は有効的な手段であると期待されます。しかしその一方で、標準化が失敗したケースもこれまで目にしたことがあるのではないでしょうか。

標準化が失敗するケースとは

標準化が失敗する状態について、ここでは「掲げた標準施策が実際に運用されず、やがて形骸化する」ことと定義してみます。
失敗に終わる理由はケースに応じてさまざまですが、例えば以下のようなものが考えられます。

  • そもそも守られない、守ることが難しい内容である
  • やることが増えるばかりで標準化を推進するメリットが感じられない
  • 目的が共有されず、同意を得ていない
  • 押しつけ感、やらされ感が払拭されない状態での実施でモチベーションが低下
  • 標準化施策推進に対する意識やスキルが醸成されていない
  • 一度作ったきりで終わる(定着化のサイクルが設計されていない)
  • 施策が不十分である

上記に上げた理由の中から、今回は最後の「施策が不十分」とはどういうことか、少し掘り下げて考えてみたいと思います。

適切な施策を検討するには問題を正確に把握することが必要

「施策が不十分」とは、設計した施策の目的や対象範囲が不明瞭であったり、特定した要因が適切でなかったりする状態ですが、ここでは「改善対象と見なした問題の把握が適切でない」ことを挙げて考えてみたいと思います。
問題を把握するには、まず現状の姿(AsIs)を把握したうえで、次にあるべき姿(ToBe)を定義し、その両者間の乖離(Gap)を抽出します。これが解決すべき「問題」となります。
ここで重要なのは、比較対象のうえでベースとなるAsIsを正確に洗い出すことです。施策を打ち出す際にはそれが現場の実情に即している必要があり、そこに立脚しない限りは期待通りの効果を得ることは難しいのです。

コンサルタントの言葉

先日とある提案案件について外部コンサルタントと会話する機会がありました。
この提案先の顧客では、設計開発におけるPJマネジメントが整備されていないことから開発プロセスの遅延や設計変更などの後戻り対応が多く発生し、開発期間が延長、その結果製品の市場投入が遅れているという課題を抱えていました。
この改善方針として「プロマネが参画するタスクフォースを設立して標準的なPJマネジメントを検討し、設計した標準化施策を開発現場に浸透させる」という案について意見を伺いました。
説明を聞いたコンサルタントは開口一番「失敗する典型的な例である」とコメントし、以下のようなその理由を挙げました。

  • PJマネジメントが整備されていないということは、たとえ標準的なPJマネジメントの進め方を整備して推進したとしても、現場にそれを受け入れて運用できるだけの土壌ができていないということ。
  • また、その標準施策を検討する際にも、経験豊富でPJマネジメントに長けたプロマネを呼んで会議などで議論したとしても、理想と現実を適切に区分けしてファシリテーションしない限りは現場の実情に即したアイディアが出てくるとは思われない。
  • したがって、このような方法で推進しても結局は形骸化することになる。

これはもちろん、標準化そのものを否定しているものではありません。標準化を進めるうえでは、それを適用する現場において問題意識と当事者意識を持たせること、また施策についても現場の状況に即したものであることが重要であることを示唆しています。このようなアプローチで進めることで、標準化が失敗するリスクを下げることができるのです。

おわりに

先日視聴したあるTV番組で「平等」と「公平」の違いを示すイラストについて紹介していました(「平等と公平 イラスト」でWeb検索するとすぐに見つかります)。そこではひとつの解釈として「『平等』は同じ前提条件と機会を与えスタートラインを同じにすること、『公平』は結果を意識してゴールまでの距離を揃えること」を説明していました。
標準化は同じアウトプットが出るように結果を意識して施策を立てますが、前述のようにそれを実施する現場、スタート位置のことも重視する必要があります。標準化施策を検討するうえでは、受け入れる側が「不平等だ」「不公平だ」と感じないようにする必要があることを改めて感じました。

今回のご紹介が皆さんの活動のご参考になりましたら幸いです。