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共感力と瞬発力で要件定義を乗り切る
PJ活動お役立ちコラム
第115回 2023年2月7日
共感力と瞬発力で要件定義を乗り切る

読者の皆さんは「要件定義」に苦労されたことはありませんか。とくに比較的小さな規模のプロジェクトで、顧客側のキーマン1人がすべての決定権を持つようなケースでは、プロジェクト初期での要件定義がとても重要で、ここを曖昧にしておくと際限なく「要件見直し」が繰り返されかねません。
しかし、要件定義というのは実に難しい仕事です。近年とくにそう思うようになりました。技術の進歩が速く社会情勢もめまぐるしく変わり、良くも悪くも「やってみなければ分からない」部分が多いのです。
今回は、要件定義をスムーズに進めるコツについて、考えてみたいと思います。
要件定義をスムーズに進めるには
要件定義を進めるうえで最も重要なポイントは、最初期段階での顧客ヒアリングだと考えています。それは顧客キーマンとの最初の顔合わせの場かもしれませんし、受注前の案件オリエンテーション時かもしれませんし、見積もり提示前後の数回の顧客面談かもしれません。限られた時間の中で、顧客ビジネスの全体像を掴むこと、顧客が解決したいと考えている課題を深く理解すること。その際に生きて来るのが、共感力と、瞬発力です。
共感力:顧客の「思い」に共鳴するスキル
課題、というのは、たいていは複雑なものです。たとえば「属人的な業務を見直して効率化したい」というようなありがちな「課題」が提示されたとして、その背景には様々な事情があるものですし、その課題を誰の視点で見るかによっても違うものです。解決する手段や方向性も一つではないでしょう。
そこで、いま、目の前で、話を聞かせてくれている顧客キーマンの「思い」を大事にするようにしています。数ある中でどの部分がとくに問題なのか、どれをいちばん解決したいのか、それはなぜなのか、上位者はどう考えているのか、現場はどういう思いなのか・・・。顧客の考えを丁寧に聞き取り、背景を想像し、共感し、同じ目線で「課題」や「ありたい姿」を思い描きます。すべてを写し取るのは無理としても、プロジェクト最初期の段階である程度顧客の「思い」を共有できていれば、少なくともそれに近い視点でプロジェクトの要件を考えることができるわけです。
瞬発力:気付くスキル、質問するスキル
とはいえ、顧客と対面で話ができる時間は限られています。その場で初めて聞く話だったとしても、わずか数度のやり取りの中で、顧客が置かれている状況の全体像を掴み、顧客の思いを聞き出すのは簡単ではありません。たとえば、自分の頭の中で仮説を立てて、顧客との質疑応答の中でその仮説を検証し、訂正し、精度を高めていく、というような手法を取ります。
そのようなときに発揮されるのが、瞬発力です。顧客が何を気にしているのか、何を期待しているのか、敏感に察知して、それを確かめるために機を逃さず質問を行う必要があります。相手の答えを聞いてさらに深掘りして行く間合いの取り方や、曖昧な発言に目を光らせて質問に変えていくのもテクニックです。まごまごしている時間はありません。即断、即決で、タイミングよく反応していく必要があります。まさに瞬発力というわけです。
このようにして、顧客の思いに共感しつつ、プロジェクトが目指すべきゴールの姿を明確にできれば、その後の要件定義をスムーズに進めることができるというわけです。
顧客の代わりに課題を追求し続ける
ところで、顧客の課題感は、実は時間と共に変動します。外部要因によって変わることもあれば、プロジェクト遂行中に現れた障害によって方向性が変わることもあります。新しい事実に気付きプロジェクト当初は考えていなかった方向にスコープが広がることもあります。そのたびに要件を見直して日程を引き直したりしていては、プロジェクトがいつまで経っても収束しません。
これを防ぐ意味でも、プロジェクトを進める我々は、プロジェクトが解決すべき「課題」をぶれずに追及し続ける責任があると考えています。このまま進めていけば当初の課題は解決できるのか、スコープ外のことに捉われてゴールを見失っていないか。ときには顧客に対して、軌道修正を提言しなければいけないかもしれません。最初に定めた「要件定義」を守るもプロジェクトの仕事というわけです。そのためにも、初期の段階で顧客その人から聞き出した「思い」や「課題感」は、プロジェクトが終わるまで忘れてはいけないのです。
まとめ
要件定義をスムーズに進めるコツ:
- プロジェクト最初期に顧客ビジネスの全体像を掴むこと
- 顧客が解決したいと考えている課題を理解し共感すること
それを実現するために必要なスキル:
- 共感力
- 瞬発力
今回のコラムが、皆さんのビジネスに少しでもお役に立てましたら幸いです。