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問題解決で生じる「葛藤」への向き合い方

PJ活動お役立ちコラム
第102回 2022年11月8日
問題解決で生じる「葛藤」への向き合い方

プロジェクト推進において発生する問題を解決する際、その方法や進め方に対して関係者から反対の声が上がることもあります。同じ目標に向かっているはずなのに、なぜ?今回はそのような「コンフリクト」を「葛藤」と表現して、この処理の仕方についてお話ししたいと思います。

問題解決のプロセスではコンフリクトが生じる

プロジェクトを推進するうえでは数々の問題が発生します。私たちは、それらを課題として定義したうえで要因を洗い出し、解決に向けての施策を考えて実行していきます。
しかしながら、解決施策を検討したり、また実施したりする際には、関係者間で意見が異なって「コンフリクト」が起きることもしばしば見られます。これは、それぞれの立場や利害関係、役割、ものの考え、思い、指向等が異なる以上は当然と言えましょう。
加えて、心理的・感情的な要因も無視することはできません。
先日、とあるコンサルタントと会話をする機会がありました。彼曰く『現在あるPJのファシリテーションとアドバイスを行っているが、PMのAさんは周りからの評価があまりよくなく、不信感を持たれている。彼の上司からも、相談というか半ば愚痴みたいな話を(会議外で)聞いていて、だから会議の場ではそのような背景も考慮している。』とのことでした。問題解決に向け、コンサルタントとして活動するうえでは、関係者間の心理的な関係性も踏まえる必要があることを示す一例です。

コンフリクト≒葛藤は、必ずしも除外するべきばかりでもない

さて、このコンフリクト(conflict)という言葉は、示す内容に応じて「衝突」、「軋轢」、「相克」などと表現することができますが、ここではいったん(心理的なニュアンスも含めて)「葛藤」と言い換えてみましょう。
問題に対する解決施策を検討・実施する際、「葛藤」は必ずしも障害となるばかりではありません。葛藤が生じたということは、これまで見えなかった問題が表面化し、関係者がその解決に向けて本気になった、と言えるからです。では、この葛藤が生じた際、コンサルタントはどのようにこの解決に向けて行動すべきでしょうか。

葛藤を処理する方法

最もシンプルな葛藤の構造は、ある事象に対する「賛成の立場」と「反対の立場」の二者間の関係です。例として、ある開発プロセスに対して変革を推進する側と開発側とを見てみましょう。推進側は、開発プロセスにおける何かしらの問題を解決するために開発側に変革を促します。一方、開発側は、その問題を解決する必要性は理解していても、従来のプロセスを変えることには抵抗を感じます。
両者間の葛藤を解決するためには、まずは両者の見解・意見を十分に出し合うことが大切です。そのうえで、コンサルタントはそれぞれの意見を文章や図表などで示し、「見える形」に整理します。これにより、関係者が互いの論点(および相違点)を客観的に共有できるようにします。
次に、双方が合意する「あるべき姿」について議論し、共通の目標として共有します。問題点の追求というミクロの視点から、目線を未来に向けたマクロ的視座を提示するのです。例として、開発プロセスの一部を自動化することを上げてみます。この際、ミクロ観点での議論に終始した場合、開発側から担当者の仕事が失われることへの懸念による抵抗が予想されます。これに対し、例えば『自動化によって本来の開発業務に注力する余地ができ、リソースを再配分することで部門全体の開発力を高めることができる』といった姿を描き、共に合意・共有可能なゴールとして定め、建設的な意見を相互に交わしながら進んでいけるような道筋をつくるのです。
続いて、この葛藤を解決する方法を検討していきます。この際、相反するA案、B案のどちらかを選択(二者択一)することもあれば、第三のC案を提示・検討することもあります。いずれにせよ、前段階で定めた「あるべき姿」に立脚することが重要です。

上記に示した流れに沿って進められれば理想的ですが、そもそも葛藤は様々な要因が複雑に絡み合って生じるものであるため、実際にはこのようにスムーズには進まないことの方が多いでしょう。しかし、「見える化」と「将来像提示」を実行することで、葛藤解消の可能性を高めることができると考えています。

おわりに

今回は、問題解決における関係者間のコンフリクトを「葛藤」と表現し、その処理方法について述べました。「葛藤」という言葉は、枝同士がもつれて絡む様子からきています。「対立」や「軋轢」という言葉に比べ、「もつれ」であれば、それは簡単ではなくても『ほどけるもの』と思えませんか。
今回のご紹介が皆さんの活動のご参考になりましたら幸いです。