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プロジェクトの「人間関係」に悩んでいませんか?
PJ活動お役立ちコラム
第86回 2022年7月19日
プロジェクトの「人間関係」に悩んでいませんか?

プロジェクト業務を遂行するうえで避けられない「人間関係」。
他者と「わかりあえない」ことに、多くの人が悩んでいるのではないでしょうか。
お互いに「わかりあえない」ことから生じる悩みについては、都合のよい解決方法はないため、様々なノウハウやスキルを用いて解決しようとしますが、うまくいかないことのほうが多いのかもしれません。
その結果、関係改善をあきらめたり、相手のことを不快に思ったり苛立ったり、または問題から目をそらして誰かが解決してくれるまで見て見ぬふりをしてしまうかもしれません。
では、よりよい人間関係を築いてプロジェクトを成功させるためには、どうしたらよいのでしょうか。
今回は、他者と働くために必要なこと、組織を動かすために現実的で効果的な方法について説明している本をご紹介いたします。
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著者:宇田川 元一
書名:他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論
発行:NewsPicksパブリッシング
発行年:2019年10月
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解決方法は、「対話」=「新しい関係性を構築すること」
我々が悩んでいる人間関係の多くは、既存の方法で一方的に解決ができない複雑で困難な問題「適応課題」です。
本書では、この「適応課題」に向き合って解決する方法が「対話」であり、「対話」とは「新しい関係性を構築すること」だとしています。
「対話」とは、他者と自分のナラティヴ(解釈の枠組み)の溝に橋を架けること
本書によれば、誰しもが「ナラティヴ(解釈の枠組み)」を持っており、ナラティヴとは、例えば私たちがビジネスをする上での「専門性」や「職業倫理」、「組織文化」に基づいた解釈が典型的とのことです。
他者との関係性において自分と相手のナラティヴが異なる場合、お互いの間に溝が生じています。
この「溝に橋を架けていくこと」が「対話」であると本書では語っています。
そもそも溝に気付くこと自体、簡単ではありませんが、他者との関係性に生じたナラティヴの溝に向き合い、溝に橋を架ける4つのプロセスを本書で紹介しています。
ナラティヴの溝に橋(新しい関係性)を架けるためのプロセス
本書で紹介しているプロセスは以下の4つです。
詳細は割愛しますが、本書ではわかりやすく図説してくれていますので参照してみてください。
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準備「溝に気付く」
相手と自分のナラティヴに溝(適応課題)があることに気づく -
観察「溝の向こうを眺める」
相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティヴを探る -
解釈「溝を渡り橋を設計する」
溝を飛び越えて、橋が架けられそうな場所や架け方を探る -
介入「溝に橋を架ける」
実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く
どうしても自分中心のナラティヴで考えがちですが、ポイントは自分のナラティヴは一旦わきにおいて、相手の立場で考えてみること。そうすることで、自分にとっての一般常識が相手にとってはそうではないことに気が付くと本書では語っています。
「対話」に挑むときに陥りやすい5つの罠
本書では、「対話」に挑むときに陥りやすい5つの罠についても紹介しています。
「対話」に挑んでいるつもりでも、「対話」になっていない状況に陥ることがあるため、注意が必要です。
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気が付くと迎合になっている
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相手への押し付けになっている
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相手との馴れ合いになる
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他の集団から孤立する
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結果が出ずに疲労感に支配される
おわりに
本書の記載を引用します。
『組織の中で、お互いにそれぞれのナラティヴの中で正しいことを主張して、相手を変えようとすることによって溝は深まっていきます。しかし、相手に相手のナラティヴを捨て去ることを求めるのではなく、相手のナラティヴをよく観察した上で、相手がよりよい実践ができるように支援していくことが何より大切なのです。』
『対話の実践は自分を助けることになります。』
いかがでしたでしょうか?
一方的に自分のナラティヴ(解釈の枠組み)を主張し続けるのではなく、プロジェクトメンバーのナラティヴを理解して、相手と自分の間の溝に橋を架けて新たな関係性を築くこと、これは自分だけでなく相手も一緒に成長することができ、円滑なプロジェクト運営とプロジェクトの成功につながるのではないでしょうか。
今回の紹介がみなさんのプロジェクト成功の一助となりましたら幸いです。