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失敗を嫌う世代に挑戦する喜びを経験させたい
PJ活動お役立ちコラム
第78回 2022年5月24日
失敗を嫌う世代に挑戦する喜びを経験させたい

5月は、多くの企業で新入社員が配属されてくる時期かと思います。皆さんのプロジェクトチームにも新人がアサインされたかもしれません。2022年大卒入社であれば、多くは1999~2000年頃生まれの、世に言うZ世代です。この世代の特徴として、「失敗を恐れて挑戦しない」傾向があるとよく言われます。その背景には何があるのでしょうか。
Z世代の背景
この世代は、小学校低学年の頃に(親世代の)リーマンショックを経験し、高学年の頃に東日本大震災があり、高校を卒業するころから全国各地で豪雨や震災などの自然災害が相次ぎ、大学4年間の多くをコロナ禍で過ごしました。生まれた頃からデジタルに接し子供のころからスマホに触れ、デジタルネイティブならぬ「ソーシャルネイティブ」とさえ呼ばれる彼らですが、そういう時代背景を持って成長して来たことを知っておくと良いかもしれません。
失敗が嫌いな世代
先ほども述べましたが、この世代は「失敗」を嫌う傾向が強いようです。先日話を聞いたある企業の採用担当者によれば、それは「怒られるのが怖いからではないか」ということでした。昔のような過当な受験戦争もなく、友達のような親に大切に育てられた世代。学校でも強い言葉で叱られた経験が少ない。その一方で、問題を起こした企業や有名人がネットで叩かれる場面を数多く目にしてきた。失敗すると叩かれる。失敗すると怒られる。SNSでは死活問題。それを避けるために、失敗しないようにふるまう。失敗するくらいなら成功を諦める。その考え方が就職活動においても発揮され、堅実で面白味のない就職先を選びがちなのだ、と。少し類型化し過ぎなきらいはありますが、彼らが失敗を嫌がる背景にあるものとして、一面の真実を突いているようです。
しかし、失敗も経験のうち、失敗無くして成長無しと言います。失敗を恐れずあえて難しいことに挑戦して初めて得られることも多く、筆者自身も失敗を繰り返す中で多くを学んで来た実感があります。失敗を嫌う若い世代に、あえて挑戦を通じて学びを得てもらうにはどうしたらよいのでしょうか。
失敗を避けるための処世術
実は失敗したくない彼らは、何か新しいことに挑戦するとき、いきなり取り組もうとはしません。事前にあらゆる手を尽くして情報を集め、先人がどこで失敗したか、成功した人は何をどう選択したのか、といった情報をどこからか見つけて来ます。ソーシャルネイティブと言われるだけあって、SNSのコミュニティなども自由に活用するようです。そして、数ある選択肢の中から、比較的失敗せずに済みそうなものを選択します。どれを選んでも成功する確率が低いことがわかれば、挑戦すること自体を諦めます。それが彼らの処世術なのです。
が、見方を変えると、それはプロジェクトにおける「リスク管理」に似たところがあります。プロジェクトのリスクの在処を想定し、それが顕在化しないようにあらかじめ手を打つ、少しでもリスクの小さい手段を選ぶ、回避策を講じる・・・そう考えると、彼らの性向は、ある部分ではプロジェクト管理と相性が良いのかもしれません。
失敗を恐れず挑戦させるために
先日たまたま話を聞いた開発プロジェクトでは、若手メンバーを開発リーダーの一角に登用するに際して、以下のような工夫をしていました。
- プロジェクト初期の企画・予算取りの段階からメンバーとして参加させる。リスク洗い出しや要素技術の事前検証を一緒に行う。プロジェクトが何を目的とし、どのような日程感で進行するのか、難所がどこにあるのか、肌感覚として理解させる。
- 彼に担当させるモジュールに関しては後続工程に余裕を持たせ、費用も多めに積む。そのうえで、早く終わる必要もなく安く終わらせる必要もないので、この枠内に収まるように考えてみて、と伝える。
- 以降は、タスクを分解して日程を立てるところから、実務を請け負う開発ベンダーとの情報の受け渡し、定例会議での進捗報告や顧客交渉まで自分でやらせる。困ってもあえて手を出さず、やらせて、失敗させる。
- その代わり、プロマネの方からこまめに「どう?」と話しかけたり、交渉の場に同席だけはして、不安にさせないようにした。
やややり過ぎな感もありますが、そうまでしてでも、挑戦する喜びを経験させたかったそうです。その若手も、これだけ手厚くサポートしてもらえれば、安心して失敗ができたことでしょう。
そしてよく見ると、事前に入念に情報集めを行いリスクを潰してから取り組みたいという、若い人たちの性向に沿う形で取り組ませていることに気付きます。ここには失敗を嫌う彼らに「挑戦」をさせるためのヒントがありそうです。
要点をまとめると:
- 全体像を把握させるとともに、リスク洗い出しにあえて参加させる。
- 日程に余裕を持たせ、自分の裁量で行える幅を認識させる。
- そのうえで、任せる。
若い世代に限らず、自分が見聞きしたことが無いことにチャレンジするのは勇気が要るものです。そんなときに背中をひと押しするのにも有効かもしれません。
みなさんの活動に少しでもヒントになりましたら幸いです。