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プロジェクトエコノミー時代の到来に向けて
PJ活動お役立ちコラム
第70回 2022年3月29日
プロジェクトエコノミー時代の到来に向けて

今回は、「プロジェクトエコノミー時代の到来に向けて」というテーマでお話します。
「プロジェクトエコノミー」という言葉は、もしかしたら、まだ馴染みの薄い言葉かも知れません。ただ、現在進行中の第四次産業革命においては、テクノロジーの進歩や発展は人智を超える速さで進み、日々の企業活動においてもAIやロボティクスの更なる浸透が進んでいることは、皆さんもご承知のとおりかと思います。今後は、進め方ややり方さえ理解すれば、誰が作業しても同じ結果が得られる従来型のオペレーション業務は、次々と自動化され、わざわざ人の手を介さずとも目的の成果を得られる状況になりつつあります。このような状況がさらに進めば、2025年あたりで大量失業時代が来る、との笑えないニュースも以前より耳にする機会が増えたように感じます。ポストコロナ(ウィズコロナ)時代とは、コロナ前の世界に戻ることでは決してなく、私たちビジネスパーソンにとって、更なる苦難の時代に突入する、との悲観的な見方も国内外の識者の間ではもはや常識レベルで語られるようになっています。
このような時代背景から、現代の経済・産業の原動力は、とにかく効率化を図り、生産性を高めることが最大のテーマとされてきたオペレーション型企業活動から、プロジェクト型企業活動へ変化していくと言われています。このことは世界的な傾向として注目されています。
ホワイトカラーも油断できない時代
高度な自動化の世界と聞いて、初めに皆さんがイメージするのは、自動運転に象徴される交通関係の仕事かも知れません。マイカーの運転(法律上は業務扱い)はもとより、鉄道やバスなど公共交通機関のドライバーの仕事は、第四次産業革命における産業構造の変革によってかなりのインパクトがもたらされることがほぼ確定している、と言えます。また士業と呼ばれる職業も、これまでのような人間しかできない業務範囲はかなり限定的になると言われています。
それでは、私たちごく普通のビジネスパーソンの業務はどうでしょうか。「私の仕事はルーチンワークの類ではなく、そう簡単に人工知能やロボットに置き換わるはずはない」と誰しもが考えがちです。確かにそうかも知れません。しかし、高い専門性や論理的思考(ロジカルシンキング)を伴う高度な業務であっても、むしろそうした業務こそが人工知能がもっとも得意とする業務であり、所謂、知識労働者(ホワイトカラー)と言えども、まったく油断できない時代であると考えるほうが自然だと思えるぐらい時代は進化していると思います。
より高度に、そして難しくなる企業経営
これからの企業経営や企業活動で何よりも求められるのは、単に良い製品やサービスをより安く、多く売って儲けることではなく、日本や世界が抱える社会課題を解決することが何よりも重要であると言われています。特に脱炭素や再生可能エネルギーの活用を始めとする環境問題への対応は注目度が高く、SDGsやESGなどのキーワードは、報道を始めこの言葉を聞かない日はないぐらい当たり前の状況になっています。市場や株主も企業活動の健全性を測る指標として、従来のような財務指標だけを見るのではなく、こうした地球環境を持続可能なものにするための活動に企業がどれだけ本気で取り組んでいるかを示す非財務指標に注目していると言われています。もちろんこれらの活動を無償で対応することはできず、社会課題の解決を図ることでしっかり利益を獲得することが、どの企業にとっても最重要課題となっています。
人は何をすべきか
人工知能を始め「テクノロジーはどんどん進化する」、社会課題の解決と利益確保のバランスを考慮するなど「企業活動の目的はより高度に難しくなる」時代において、我々人間はどうすればよいのか、この深い問いに対し、強い不安を覚える方も多いと思います。もちろん、筆者も例外ではありません。
こうした中、一つの方向性として考えられるのは、「人間の存在価値とは何か?」という原点に立ち戻ることだと思います。企業単位においても、存在意義(パーパス)を定義することは経営の視点から大変重要なテーマですが、ここで申し上げたいことは、「一人の人間として、ご自身の会社で働くことの意味・意義など個人のパーパスを定めること」の重要性です。皆さんにとってのパーパス(存在意義や原点)とは、どのようなものでしょうか。ここでは小難しい哲学的な話をするつもりはありません。
あくまで筆者の個人的な見解にはなりますが、「自らの意思で挑戦し、そこから学びを得ること。このことはまだAIやロボットにはできない人間だけの大きな特権」だと考えています。もちろん、学ぶだけならAIには勝てません。ただし、AIは自ら挑戦はしません。難しい時代に働く我々にとって、今後の日々の業務は挑戦することの連続だと思います。挑戦には、高度なマネジメントが必要です。同時に人材育成を始めとする能力開発も必要です。
また、事業のDX化を始めとする企業変革活動の推進においては、始めから正解が用意されている訳ではありません。アジャイル的に、俊敏に、行動と軌道修正を繰り返しつつ、少しずつゴールにアプローチしていくことが求められます。つまり、すべての企業活動はプロジェクト化し、プロジェクトには高いマネジメントスキルが求められる、そういう時代になると思っています。もはや、プロジェクトマネジメントは、システム開発やサービス開発にだけ使うものではなく、あらゆるビジネスパーソンが兼ね備えるべき、人間系の最重要スキルになると思っています。
すべての企業活動はプロジェクトになる
冒頭に記載した「プロジェクトエコノミー」とは何か?という点について、筆者は上述したような内容で理解しています。もちろん、この他にもいろいろな解釈や考え方があって良いと思いますし、そうあるべきだと思います。
何よりも大事なことは、近い将来「もしかしたら自分の仕事はなくなるかも知れない」と悲観的に考えるのではなく、例えば、プロジェクトマネジメントを学んで、人間にしかできない挑戦をしてみること、挑戦から学びを得て、それを次に繋げること。こうした活動を通じて一人の人間として、一人の企業人として成長していくこと、こうしたことも現代のような難しい時代を生き抜く一つの術かも知れません。
皆さんにとって役立つ話だったら幸いです。