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自動化は良いことばかりではない

PJ活動お役立ちコラム
第68回 2022年3月15日
自動化は良いことばかりではない

近年、あらゆる業種・業界で「RPA導入」「業務プロセスの自動化」ということが盛んに行われています。本コラム読者の皆さんも、自動化に取り組まれた経験がおありかと思います。あるいは今まさにRPA導入プロジェクトに携わっているという方もいらっしゃるかもしれません。私たちもプロジェクトを円滑に進めるため、大小さまざまな「自動化」を業務に取り入れています。
今回は、そんな中で最近身近に起こった教訓的な事例をご紹介したいと思います。
   
※ひと口に自動化と言ってもさまざまな有り様が存在しますが、このコラムでは、もともと人手で執り行っていた業務プロセスの一部を、ロボットやツールに代替させることを指しています。

自動化のメリットとデメリット

かつては夢物語のようにもてはやされたRPA/自動化、実はメリットも大きいデメリットも少なからず発生します。自動化に取り組まれた経験がある方は、人がやっていたときには発生しなかったようなトラブルに、実際に直面されたことがあるのではないでしょうか。

よく言われるメリット よく言われるデメリット
・プロセス品質向上(ヒューマンエラーは無くなる)
・コスト削減(人件費の削減)
・生産性・処理速度向上(夜間稼働も)
・予期せぬシステム障害(人手ではないので)
・業務のブラックボックス化(中間プロセスは見えない)
・柔軟な運用ができない(わずかな変更でもプログラム改修が
 発生する)

今回取り上げる事例も、上に挙げた「柔軟な運用」に関するものでした。

事例の概略

  • 半年に1度システムの点検を行うプロジェクトがある。1週間かけてログを採取して分析する。毎回少しずつ追加要望がありプログラム改修を行っている。
  • 前回の更新時に、ログ採取の一部自動化に踏み切った。手慣れたオペレータが手作業で行っていたログ採取・集計作業の主要プロセスをクリック1個で行えるようにした。これにより、半年前はこの業務に習熟していないオペレータにも安心して作業を任せることができた。
  • 先月が、半年ぶりの点検のタイミングだった。今回も小さなプログラム変更が入ったが、自動化した部分にも影響がある内容だった。
  • ところが、自動化プログラムを書いた当人(長年この業務を担当して来たオペレータ)は他プロジェクトに移ってしまっていた。
  • 今回はパラメータを1つ書き換えるだけなのだが、その影響範囲を見極めるために関係者が集まってミーティングを繰り返した。ある1箇所の処理について、そこでその処理を行う理由がどうしてもわからず、たったそれだけのために1時間のミーティングを2回行うことになった。3回目のミーティングで問題の担当者を呼び出したところ、最初の2、3の質問ですべてが解決した。ミーティングは10分もかからずに終了し、ほどなくして、前回同様クリック1つでログ採取・集計の大部分を行える環境が用意できた。
  • 一方、そのミーティングではもう一つの事実が判明した。当該箇所の仕様や処理内容については、自動化スクリプトのリリース時に詳細に記述されていたのだ。仕様変更を行う場合の注意点も丁寧に解説されていた。チームのメンバーは誰もそのことを覚えていなかった。自動化できたことに満足して、リリースメモの内容には誰も注意を払っていなかったのである。
  • チームの反省会では、もし前回「自動化」を行っていなかったら、ということに話題が集中したそうだ。自動化が万能ではないことはもちろん承知していたつもりだが、こういうもろさがあることには思い至らなかった。今回プロセス上の変更はわずかなものだったのに、「自動化」プログラムの読み解きと改修に多くの時間=コストを費やすことになった。今回のプロジェクトに限って言えば、オペレータのトレーニングに多少コストがかかったとしても、以前のように手作業で行った方がトータルで安く上がったことは間違いないと・・・。
  • とはいえ、チームとしては自動化の方向性自体は間違っていないと考えており、今回の反省を踏まえて、あらためて前任者から綿密な引継ぎを行い、数か月後の次回点検時に向けてドキュメントを整備することを決めた。

得られた教訓

とくに最後のチームの反省内容を読まれて、どう思われましたか?「自動化」ということ自体まだ成熟途上の技術分野であり、ここで結論めいたことを述べることはできないのですが、あえて今回得られた教訓を挙げるなら、

自動化は、自動化できたら終わりではない。むしろ、自動化した後でその状態を維持していくことの方が重要

ということでしょうか。
皆さんが「自動化」に取り組まれる際のヒントになりましたら幸いです。