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喫茶店のマスターに学ぶ仮説を持つことの大切さ
PJ活動お役立ちコラム
第62回 2022年2月1日
喫茶店のマスターに学ぶ仮説を持つことの大切さ

みなさんは、プロジェクト遂行の様々な局面で、「仮説を持つ」ことをどのくらい意識されていますか。
トラブル発生時はもちろんのこと、物事が計画通り進んでいるか検証するときも、さらにうまく進むよう工夫するときも、何らかの「仮説」を立てて、その仮説と照らし合わせて現象を把握されていると思います。(特段意識はしなくても、多くの場面でそうされていると思います)
今回は、その場の思い付きではなく「仮説を持つ(持っておく)」ことの大切さについて、お話ししたいと思います。
三現主義と仮説
「三現主義」という言葉をご存じでしょうか。とくに製造業に従事される方にはおなじみの「現場、現物、現実」の3つの「現」を大切にする考え方ですが、これを実践するにも、自分の中にある一定の「仮説」を持つことが重要です。
ただやみくもに「現場」に行き「現物」を見れば「現実」が把握できるわけはありません。「現場」ひとつを取っても、粒度や観察する角度、視座、期間など、切り取り方が様々にあり得ます。一人の人がすべてを観察し監視し続けることなどできるわけがありません。
そこで、「仮説」です。
「もし問題が発生するとしたらこの辺りではないか」「ここが正常なら全体が正常に動いていると言えそうだ」といった「仮説」を自分の中に持つことで、どの「現場」のどの「現物」を、いつどのタイミングでどういう視点で観察すればどういう「現実」を確認できるのか、方針が定まります。
三現主義の実践に、「仮説」は欠かせないというわけです。
喫茶店のマスターに学ぶ仮説の持ち方
実は最近、仮説の大事さに気付かされる事例に遭遇しました。
たまたま立ち寄った古い喫茶店、他にお客もなく手持無沙汰だったのかマスターの方から話しかけて来て、こんなことを聞かせてくれました。
「最近流行のエスプレッソ系、あれはあれで旨いが、良質なコーヒー豆を使うならその良さを台無しにしてしまう。」「良質なコーヒーをどう飲むべきかは、コーヒー原産地(南米など)の人が知っている。」「彼らは自分と同じ焙煎度、抽出温度でコーヒーを飲んでいることが最近わかった。」「出入りのコーヒー豆のバイヤーにお願いして自分の目と舌で確認して来てもらったので間違いない。」
マスターの説(あるいは味の好み)の妥当性については何とも言えませんが、大事なのは、この方が仮説を持って情報収集に努めているおかげで、普通は得られない情報を入手しているという事実。
自分の仮説をぶつけてみて初めて教えてもらえたことであり、バイヤーもわざわざそういう目で注意して観察し、現地の人とコミュニケーションを取ったおかげでその情報が得られたのです。
真実に迫るためには、仮説を持つことが大事。
プロジェクトマネジメントでの応用
プロジェクトマネジメントも同じですね。せっかく現場に行き現物を見る機会があっても、ただ漫然と事実を観察するのと、何がしかの仮説に沿って照らし合わせながら観察するのとでは、得られる情報の量も質も違ってきます。
また、今回のマスターの事例はもう一つ重要な示唆を与えてくれます。彼自身は現地に行っていないのです。自分の代役としてバイヤーに仮説を持って行ってもらい、その妥当性を検証してもらったのです。たとえ自分自身が行けないような遠隔地であっても、あるいは何かの事情で自身が頻繁に現場とコミュニケーションを取ることができない状況下であっても、仮説を言語化して明示することができれば、その仮説の「検証」という形である程度の三現主義を実践できるというわけです。
近年は小さなプロジェクトであっても、ネットワークを介して行うことが当たり前になってきました。リモートで現場をどうコントロールしたら良いか悩みを抱えるプロマネも多いと思います。
今回ご紹介した事例が参考になりましたら幸いです。