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性悪説のススメ

PJ活動お役立ちコラム
第45回 2021年10月05日
性悪説のススメ

リモートワークが普及する中で、パワハラ、セクハラ、モラハラに続き「リモハラ=リモートハラスメント」が話題になっているそうです。その名の通りリモートワーク中に行われるハラスメント行為で、主として「上司による行き過ぎた監視行為」のことを指すことが多いのですが、その背景にあるものとして「性悪説」がネガティブな意味合いで使われる場面を度々目にします。でも、プロジェクトの運営を考えるうえでは、性悪説は決して悪いものではありません。むしろこの視点を持つことが、ひとつの秘訣とも言えそうです。

性悪説:「人の性は悪なり、その善なるものは偽なり」という荀子の言葉によるもの。

性悪説とプロジェクト管理

冒頭の文脈で言うと、上司あるいは管理する側から見たときに、自チームのメンバーが期待通りパフォーマンスを挙げてくれるか結果が出るまでわからない。人間は欲望に弱いもの、メンバーが手抜きをするのではないか、仕事をさぼるのではないか、というくらいの意味で「性悪説」が使われます(本来の「性悪説」と少し違う用法なのですが、本コラムではそこは問いません)。
その不安から、

  • 規則が増えたり罰則規定が増えたりする。
  • 監視・監督のためのツールやこまめな報告のルールが導入される。
  • 管理する側は疑心暗鬼になり、管理される側はモチベーションを削がれる。・・・

悪くするとこういった不幸な悪循環に陥る可能性があります。

ただ、それは人事管理とか勤務管理といった世界の話しです。
ことプロジェクト管理に関して言えば、悪いことばかりではありません。
メンバーがミスをするのではないか、失敗するのではないかという不安からルールを制定し、監視ツールを導入し、こまめな報告を義務付ける。それでも危険が残る部分は「リスク」と名付けて慎重に管理する。いずれもプロジェクト管理の基本です。逆にそこを曖昧にして管理を甘くしていると、思わぬところで不具合を発生させたりミスが起こったりして、足元をすくわれます。
つまり、プロジェクト管理は、昔も今も「性悪説」が馴染むのです。

失敗から学ぶ

2回前のコラム「失敗は「してもいい」のではなく「欠かせない」」で「失敗から学ぶ」ことについて取り上げましたが、実は共通する部分があります。
どんなプロジェクトであれ、メンバーは成功したいに決まっています。失敗するために努力することはありません。「失敗したくない」という心理が、いつか「失敗を認めたくない」「失敗を報告したくない」という発想になります。管理する側も失敗しないように万全を尽くすうちに、「失敗するはずがない」「ミスは認めない」という風に思考がエスカレートしてしまうものです。基本的にはうまくやるもの、失敗しないもの、なのになぜ失敗したのか・・・このままでは、先のコラムで言う「クローズド・ループ現象」に陥ってしまいます。

これを避けるためのヒントが、「失敗から学ぶ」という考え方です。人はミスを犯すもの、失敗するもの。最初からそのように割り切ったうえで、プロジェクト管理を行うのです。

  • 失敗したときの被害が最小になるように安全策を取る、リスクをリスクとしてしっかり管理する。
  • 一方で、失敗するはずのところをノーミスで遂行できたとしたら、失敗せずに済ませた何らかの工夫があるはず。その工夫の様子や、うまくいった秘訣を調べる、吟味して評価する、共有する。

ミスを恐れて悪循環に陥るよりも、この方が明らかに建設的ですね。

おわりに

プロジェクトは生き物です。やってみなければわからないことも多々あります。人為的なミスに限らず、すべての事象をあらかじめ予測するなど到底できません。ならば最初から失敗することを想定して計画を立てましょう。そのうえで、失敗を最小限に抑えるために策を尽くす、という発想で行きませんか。
プロマネは、性悪説に立つことをお勧めします。