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民主的な組織運営とはどういうことか

PJ活動お役立ちコラム
第35回 2021年07月27日
民主的な組織運営とはどういうことか

今回は「民主的な組織運営とはどういうことか」についてお話します。
筆者は比較的読書が好きで、週末や空いている時間のほとんどは読書に費やします。小説や物語はあまり読まず(好まず)、仕事に直接関係する読み物や、今の世の中で起きていること、あるいは、この先の未来で起こるであろうことを知ることができる新書を読むことが多い(好き)です。そんな中で、最近特に印象に残った、ちょっと心に引っかかったセンテンスがありましたので、今回はそれをご紹介したいと思います。

「民主主義とは何か」 宇野 重規著(講談社現代新書) 2020年発行

上記は、民主主義の成り立ちを、その歴史的な背景から紐解き、現代社会で求められる真の民主主義のあり方を模索する内容になっています。言い方を変えると、民主主義をめぐるさまざまな問題とその解決の方向性を著者の高い見識と長年の研究に基づいて書かれている本でした。本稿コラムの筆者は、もちろん政治や経済学部系の現役学生ではないため、あくまで一般教養のレベルを高める目的で手にした本でした。ところが読み進めていくうちに、あるひとつの疑問が頭をよぎりました。

民主的とはどういうことか

それは、「そもそもうちの部門は、民主的な組織運営ができているだろうか?」というものです。本稿コラムの筆者は現在、組織を統括する役割を担っています。ところが、正直、まったく自信が持てませんでした。以下、本書から2つのセンテンスを引用します。

「民主主義とは、政治参加の機会拡大により人々の当事者意識を高め、そのエネルギーを引き出すということです。独裁体制の下では、人々は受動的になり、すべてを権力者に依存することになります。そのような仕組みが長期的に持続可能とは思われません。」

「また民主主義は、多様性を許容する政治システムです。その前提にあるのは、政治や社会の問題についてつねに唯一の答えがあるわけではなく、多様なアイディアに基づく試行錯誤が不可欠であるという考えです。」

このセンテンスに触れたとき、筆者には「政治」という言葉が、なぜか「部門運営」という言葉に置きかえて読んでいる自分に気付きました。もちろん独裁はもってのほかですが、「メンバーの部門運営への参加機会の拡大をどこまで本気で取り組んでいるだろうか?」あるいは、「メンバーの当事者意識を高めることがどこまでできているだろうか?」そんな自戒の念に強く駆られました。さらに、「多様なアイディアに基づく試行錯誤が不可欠」ということも、頭では理解していてもどこまで実践できているのか、まったく自信がありませんでした。

子供の頃からなんとなく「民主主義とは多数決だ」との意識があり、数の力で物事を決めてきたように思います。その際、少数派の人たちの意見は尊重しなくても良い、あるいは、尊重はしても多数派の意見との整合を図り、皆が納得する状態は作れない、という早計な諦念や間違った認識をずっと持っていたように思います。まったくお恥ずかしい限りです。

今、このような時代だからこそ必要なこと

皆さんも普段、部下や上司それぞれの立場で業務をされていると思います。部下の立場であれば、どこまで自分の意見やアイディアが上司に採用されているか、組織の運営に主体的に参加できているか、また上司の立場なら、どこまで部下の意見を全体方針の中に組み込めているか、一度立ち止まって考えてみることも組織力を高めるためには価値があるのではないかと思います。

現代は技術革新も目覚ましく、環境変化の激しい先の読みづらい時代であることは、日頃から皆さんも強く実感していることだと思います。そのような時代における意思決定では、ときにトップダウンや単純な多数決で物事を決めたほうが、即時性が高まり、メリットも大きいということも動かしがたい現実です。他方、社員やメンバー一人ひとりのやる気や働き甲斐が高まらなければ、組織力は徐々に低下し、社員の士気や組織への帰属意識も下がっていってしまいます。このような時代だからこそ、民主的な組織運営について、皆さんも身近なコミュニティーの中で少し話し合ってみる機会を持つのも良いのではないか、との思いからこのようなお話をさせていただきました。

ちなみに、民主主義の発祥は、2500年以上前の古代ギリシア時代に遡るそうで、当時の民主主義の最盛期には、すべての市民が民会という議会に参加する資格をもち、抽選で公職に就くこともできたそうです。古代ギリシアの人々が民主主義の原語であるデモクラティアという言葉を作り、実践していたことが後世の民主主義に大きな影響を与えたそうです。古代ギリシアにおいて、民主主義は極めて徹底されており、人々もそのことを強く自覚し、いきいきと生活していたようです。

今の時代に、いきいきと働くためのヒントになれば幸いです。