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ワークもライフも充実していますか?

PJ活動お役立ちコラム
第33回 2021年07月13日
ワークもライフも充実していますか?

ワークライフ・インテグレーションという言葉をご存じでしょうか。
本コラムの読者にはIT業界に身を置く方も多いと思いますが、そういう方にはお馴染みの「システム・インテグレーション(SI)」と似た概念で、ワーク(会社における働き方)とライフ(個人の生活)のインテグレーション(統合・構築)を意味する言葉です。
今回は、今日のプロジェクト運営を考えるうえでも重要かもしれないこの言葉について、ご紹介します。

ワークライフ・バランスとワークライフ・インテグレーション

みなさんも「ワークライフ・バランス」という言葉は聞いたことがあると思います。ワークライフ・バランスは、1980年代から90年代ごろ、女性の社会進出とともに現れた概念と言われています。
働き方改革の機運が高まる中で、ワークライフ・バランスの実現が改めて語られるようになったのですが、コロナ禍で多くの人の働く環境が変化していることもあってか、従来と違った方向で議論されることが多くなりました。
それまでは「ワーク」と「ライフ」を対立概念的に捉え、そのバランスをいかに図るか、という議論が中心でした。端的に言えば、

  • 「ライフ」を充実させるために「ワーク」をどこまで犠牲にするか
  • 逆に「ワーク」を充実させるために「ライフ」をどこまで犠牲にするか

という構図が一般的でした。が、いまは人によって様々な「ワーク」と「ライフ」の考え方があることが認知されるようになりました。ワークとライフは必ずしもどちらかの犠牲のうえに成り立つトレードオフの関係ではなく、その先にあるのが、ワークライフ・インテグレーションです。
ワークライフ・インテグレーションは、SIになぞらえていうなら、ワークとライフを統合して考え、そのどちらもが充実した状態にして、より大きな目的を達成する=人生の充実あるいは幸福感を得ることです。仕事とプライベートどちらも充足させることで、相乗効果的に双方のパフォーマンスを高めて行こうという考え方です。

昨今の企業側の取り組みも、この考えを後押しするものと考えられます。
テレワーク、在宅勤務、ワーケーションの活用といった働く場所・時間の制限の緩和。フレックスタイム制やみなし労働時間制、仕事の成果や貢献による評価といった人事制度の見直し。Web会議や社内SNSの導入、クラウド共有、スマートフォンやタブレット端末の業務利用といったハード・ソフト面の仕組み改善。
すべての企業、業種、職種がその恩恵に預かれるまでにはまだ時間がかかりそうなものの、大きな枠組みとしては、ワークライフ・バランスあるいはインテグレーションを図るための下準備が着々と進められているのです。

プロジェクトメンバーのワークライフ・インテグレーションを考える

さて、話をみなさんが携わる社内プロジェクトに移します。
世の中にそういう動きがある中で、メンバーから働き方についての悩みを聞く機会も増えているのではないでしょうか。プロジェクトというものが、定められた期間と人数とコストの範囲で定められた成果を要求されるという性格である以上、どうしても、ワークライフ・バランスで言うとワークの方にバランスが偏りがちです。とくにプロジェクトの「難所」では、生活の方を犠牲にせざるを得ない場面が出て来ると思います。リーダーとして、どのようなアドバイスができるでしょうか。
ワークライフ・インテグレーションに向けた取り組みとしてよく挙がるのは、以下の3点です。

  • スケジュールに余裕を持たせること(柔軟に対応できる余地を残す)
  • 成果に重きを置くこと(作業時間の長短は気にしないが、短期集中がベター)
  • プロ意識を持つこと(品質と作業効率を徹底的に追求する)

どれも簡単ではありませんが、このように意識を変化させて行く先に、ワークライフ・インテグレーションの実現がありそうです。
みなさんの身近にも、こういった働き方を上手に実践している方がいるのではないでしょうか(よくある例では、家庭の事情で時短勤務をされている方の働き方が、ロールモデルとして取り上げられます)。その方の働き方を念頭に、メンバーとの対話の場に臨まれると良いかもしれません。

おわりに

他人のことばかりでなく、リーダー自身こそ、ワークライフ・バランスあるいはインテグレーションを考えるべきです。とかく、プロジェクトを束ねるリーダーは、ワークライフ・バランスが崩れがちです。プロジェクトの進行が予定通り進まずリカバリのために残業・休日対応を余儀なくされることもあるでしょうし、メンバーが疲弊していれば自分が代わりに対応することもあるでしょう。
コロナ禍でメンバーの管理が難しくなり、自分自身で抱え込むことが増えたりしていませんか?それを、責任感のせいにしていませんか?
これを読んだ皆さん自身が、ワークライフ・バランスあるいはワークライフ・インテグレーションを考えるきっかけになれば幸いです。