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プロジェクトマネジメント学会での発表を終えて(前編)

PJ活動お役立ちコラム
第17回 2021年03月23日
プロジェクトマネジメント学会での発表を終えて(前編)

今回は去る3月11日(木)、12日(金)に開催された一般社団法人プロジェクトマネジメント学会(以下、PM学会と表記)における私たちの発表内容について、2回に分けてお話したいと思います。そのため、今回の内容は、PM学会へ提出した当社論文が出典元となることをあらかじめご承知おきください。

PM学会では、春季(3月)と夏季(8月)の年2回、研究発表大会を開催しています。当社は2017年に会員登録しています。研究発表大会は、基本的に春は東京、夏は地方都市で開催されており、私たちもこれまで毎年春に実施される東京大会に加え、福岡(17年)、京都(18年)、札幌(19年)で発表してきました。ちなみに、昨年からはコロナ禍の影響で、オンライン開催になっています。
PM学会には、国内大手のITベンダーを始め、プロジェクトマネジメント学科を有する大学の学生たちも数多く参加しており、各社・各人の発表内容を自由に選んで聴講できるため、すごく学びの多い場となっています。他社のプロジェクトマネジメントやPMO活動に関するさまざまな取り組みや工夫を聴けるだけでも価値のある場になっています。

今回、私たちは、「プロジェクト振り返りの重要性に関する考察 -なぜ失敗プロジェクトは繰り返されるのか-」というテーマで発表しました。関心の高いテーマだったのか、大変多くのプロジェクト関係者に聴いていただけました。今回はその発表内容について、少しお話したいと思います。

現在当社では、開発プロジェクトのPMOサービスに加え、プロジェクト振り返りに関するファシリテーションやコンサルティングサービスを展開しています。今回の発表大会では、お客様の振り返り活動をご支援する中で得た当社の一つの結論について発表しました。
結論から言うと、以下のことがポイントとして挙げられます。

  • プロジェクト振り返りは、犯人捜しや誰かを責める場ではない
  • 目線は常に未来に向け、明確な目的意識を持って活動することが大事
  • 振り返り結果は共有できるよう誰にでも理解できる形で言語化(資料化)する

皆さんの会社や部署では、開発プロジェクトを始め、業務に関する活動を実施したあとに振り返り活動をしていますか?すべての活動がプロマネやリーダーが最初に設定した計画やプロセスどおりに、しかも再現性を担保して活動できているのであれば、そのあとの振り返り活動は必ずしも必要ないと思います。ところが、実際はなかなか思うような成果や結果を出せない状況を多くの方々が経験しているのではないかと思います。そのことについて、当社では「振り返り」に原因があると考えています。つまり、上手に振り返りを行い、情報を共有できれば、失敗の連鎖を断ち切ることができるのではないか、と考えています。

そこで、はじめに、プロジェクト振り返りを起点とした失敗情報の伝承方法についてご説明したいと思います。

似たような失敗が繰り返される1つ目の要因は、人の問題です。そもそも関係者が忙し過ぎるという問題です。製造業を始めとする各現場では、慢性的な人手不足に悩んでいるケースが少なくありません。その結果、プロジェクト開始前に十分なリスク点検を行うことが難しくなっており、さらに、気持ちの上での余裕もなくなると、リスクの見落としを起こす可能性が高くなることは容易に想像できることだと思います。

2つ目の要因は、組織の縦割りの問題です。せっかく原因を究明し、対策を講じても、直属の上位者には情報が伝わるものの、そこで完結してしまい、別系統のプロジェクトには情報が届かない、つまり、うまく共有されないという問題です。本来はプロマネ同士がうまくリスクを指摘し合うことで、リスクの顕在化や重症化を回避できるところが、隣のプロマネにアドバイスする余裕がなく、また、目も行き届かないという状況が生じ、プロマネ間の相互扶助の関係が成立しづらくなっていることもあると思います。

3つ目の要因は、プロジェクト開始前のリスク審査の不備です。これは、事前にすべてのリスクを洗い出せていないという問題です。その背景には、プロマネあるいは上位者が見て見ぬふりをしている、あるいは、顕在化した段階で対処すれば良いと安易に考え初期段階では伏せている、といったケースがあるかも知れません。または、プロマネあるいはチームの経験が浅くリスクへの感度や知識が不足していたのかもしれません。事前のリスク審査が形骸化してしまっているケースも散見されます。

こうしたことが重なって、第三者から見ると同じ失敗が繰り返されるといった負の連鎖が様々な組織やプロジェクトで起こっているように思います。
加えて、当社ではもう一つ重要なこととして、そもそも次のプロジェクトや次世代のプロマネに引き継ぐべき情報自体が整理されていないのではないか、ということも大きな要因となっていると思っています。つまり、プロジェクトの振り返り方や、その結果得られた失敗情報の伝承に問題があると思っています。

今回は、PM学会における私たちの発表内容の前編として、プロジェクト振り返りを起点とした失敗情報の伝承方法について、ご説明しました。
次回は後編として、引き続きPM学会における発表内容をお話しします。